アメリカの国債消化は問題ない(はず)

金融危機対処法」で書いた「公的資金の投入」をアメリカが実施しつつあります。他にも対策を打ちつつあります。

アメリカが、金融機関への公的資金の投入などのため大量に国債を発行する予定であす。この国債の消化を心配して、日本がこれを買うべきだという主張があります。

また、これで財政が悪化することを懸念する声もあります。

さらに、この国債中央銀行が購入することになれば、ドルの供給が増え、将来のインフレの元になるのではないかと心配する向きもある様です。

心配ないと思います。

公的資金投入にともなう資金の流れを追っていきましょう。

まず、政府が国債を発行し、中央銀行が引き受ける。

このとき、

政府の負債の増分は、国債であり、資産の増分は同額の中央銀行への政府預金です。

中央銀行の負債の増分は政府預金であり、資産の増分は国債です。

次に、政府が銀行の優先株を取得(公的資金を投入)する。

このとき、

政府の負債の増分は、国債であり、資産の増分は同額の優先株です。

中央銀行にある政府預金口座から銀行の預金口座に振り替えが行われるので、中央銀行の負債の総額は変わりませんが、元の時点に比べると銀行の預金分だけ増加しています。資産の増分は国債のままです。

銀行の資本の増分は優先株であり、資産の増分は中央銀行に対する(超過)預金です。

ここで公的資金の投入は完了しますが、資金の流れはまだ続きます。

中央銀行への預金には利子は殆ど付きません。ゼロという場合も多いのです。銀行は中央銀行に預けてあるこの資金をどう運用するでしょうか。

銀行の経営者は、この危機の時に何を考えて運用するでしょうか?私が経営者なら、まず第1に取り付けが発生したり、銀行間市場で資金を取れなくなった時、つまり資金がショートしたときの備えを考えます。次に考えるのは、今もっている資産が痛んで、損失が発生したときの自己資本比率の維持です。最後に、安全に収益を上げることを考えます。

では、どのように資金を運用するべきか。

資金ショートの場合、中央銀行に駆け込んで資金を借りれば良いのですが、そのためには、担保が必要です。ですから、中央銀行から借りるとき担保になるようなもので資金を運用すればよいのです。

自己資本比率を守るためには、リスクウェイトがゼロである資産で運用するのが一番です。

収益を上げるためには、確実に利子が払われる債券を買えばいいのです。できれば流動性の高いものがよいのは当然です。資金を固定化していいときではありません。

具体的に考えましょう。中央銀行から借りるとき担保になり、リスクウェイトがゼロであり、確実に利子が払われ、流動性の高い資産とは何か?

答えは単純明快。アメリカ国債です。

おそらく殆どの銀行は投入された資金の大部分を使って国債を買うでしょう。仮に全額を中央銀行からの国債の購入に当てたとします。(市場から買った場合は、中央銀行が同額を市場に売れば同じ結果になります。)

資金の流れはどうなるか。

このとき、

政府の負債の増分は、国債であり、資産は同額の優先株です。

中央銀行の負債、資産と元の状態に復帰する。中央銀行はトンネルの役を果たしたに過ぎません。

銀行の資本の増分は優先株であり、資産の増分は国債です。

結局、国債公的資金そのもので完全に消化されてしまい、この流れでは外部からの購入は必要ありません。単純に言えば、政府と銀行が国債優先株を交換するだけの話なのです。2,500億ドルの公的資本の投入とはそれだけのことです。

そして、危機がすぎれば、国債の償還に併せて優先株が償却され、国も銀行も元に戻って行くだけである。

おそらく財政にも、金融機関の収益にも殆ど影響はないでしょう。国債に対する利払いと優先株に対する配当が打ち消しあいますから。

なお、この流れでは通貨が増発されません。ドルが市場にあふれたりはしないのです。金利は変動しませんし、インフレも起こりません。

アメリカの国債消化は問題ない(はず)です。

ここをクリック、お願いします。

人気blogランキング

人気blogランキングでは「社会科学」では39位でした。