金融危機対処法

(2008年10月7日、10日に追加修正しました。)

現在のような金融危機がA国、E共同体で起こったときにどうすればよいか、A国、E共同体、J国の対応を考えてみました。

1 流動性危機の時にとにかく緊急にやらなければいけないこと:不安感の除去・・・これはA国、E共同体、J国共通です。

イ 金融機関の資金繰りの確保

 プロである金融機関ですら取引相手の金融機関を信用して貸していいのかどうか分からなくなってしまったとき、カウンターパートリスクが高まったともこのリスクがどれぐらいか分からなくなったとも言えますが、は中央銀行が資金繰りを助けてやる。具体的には、適当な担保をとって、中央銀行がその銀行の中央銀行の口座に資金を振り込んでやる(準備預金の増加です)ということです。

 中央銀行への準備預金がどんどん増え、資金繰りに困っていた銀行は、これを引き出して決済に当てます。支払いを受けた側は、預け先がないので、中央銀行へ準備預金として預け入れます。準備預金が増えますし、市中にある銀行券も増えます。マネタリーベースはどんどん増えます。

 でも、将来のインフレなんか気にしない。貸し倒れになってもいいから求められるだけ貸す。けちけちしない。これは、中央銀行の決断だけでできます。

問題が二つあります。

一つめ。中央銀行から借りるための担保がなくなったらどうするか?取る担保がなくなったらどうするか?まずは、質の悪い担保も認め、後は、無担保で貸すかどうかです。

二つめ。自国通貨ではなく、外国通貨での決済資金が不足したらどうするか?自国通貨なら中央銀行の決断次第でいくらでも貸せますが、外国通貨はそうはいきません。この場合は、中央銀行間でスワップ協定を結んで対処です。

三つ目。銀行以外の金融機関はどうするか?特例で中央銀行の取引を認めるほかないでしょう。

もちろん、この段階で金融機関は中央銀行を当てにするだけではなく、自ら流動性確保に努めます。とりあえず、現金化しやすいものから売るというのが一般的な対応でしょう。

一番売りやすいのは、普段、市場で活発に売買されている社債、上場投資信託、株式など金融資産です。残念ながらこれらの市場には、売りが殺到し、価格は下落し、下落が下落を呼ぶという展開になります。

ただし中央銀行が担保として認める短期、長期の国債流動性が高く、リスクも低いので保有しようとするものが増えます。値上がりするでしょう。同時に、短期の国債に資金を投入するはずです。短期国債金利は急低下するはずです。そして、民間の債権とのスプレッドは広がるでしょう。

ロ 預金の保護:金融の安定

 金融危機が進んで金融機関の経営不安が高まると、取り付けが起こる可能性があります。取り付け騒ぎを防止するため、思い切って預金を保護する。取り付けが起こるよりましと割り切ることです。これには、政府、国会の決断が必要ですが、国民の支持は得やすい。他人の株式が値下がりして資産が吹っ飛ぶのはたいして気になりませんが(とkに株主が金持ちの場合)、自分の預金がなくなるのはとてもいやだからです。この保護がたとえ社会主義的でも、市場への介入でも気になりません。

それでも取り付けが起こったら、イと同じ。取り付けにあった銀行に貸せるだけ貸す。これも、中央銀行の決断だけでできます。

 唯、注意が必要です。特定の銀行の預金だけを保護するととんでもないことが起こりかねません。保護されない銀行から預金を引き出して保護される銀行に預け入れる人が出てくる可能性があります。あるいは、健全な銀行に預金が集中する可能性があります。

引き出される銀行からみれば、ついでに第三者の目から見れば、これは取り付けです。やるなら、広範な銀行を対象にやるべきです。保護する預金の種類、限度額もそろえるべきです。

 

(参考) J国への影響

 A国、E共同体でこのような状態が続いている間、A国、E共同体では銀行が手元の現金を確保するために貸し出しを抑制します。J国の銀行にとっては、A国、E共同体での貸し出しを増やすチャンスです。貸し倒れにならないように気をつけて。

A国、E共同体の金融機関がJ国に投資をしていれば、それも売って資金繰りをつけようとします。叩き売りになれば、J国の資金力のあるものにとっては大もうけのチャンスです。A国の資金を当てに商売をしていたJ国の企業も資金繰りに悩み、資産を売り始めるでしょう。チャンスかもしれません。ただし、こういう会社に融資をしていたJ国の金融機関も打撃を受けます。

2 1のように対処して、金融機関の資金繰りは中央銀行が面倒を見るということが浸透し、とりあえず危機感が薄くなってきたら次のステップ、金融機関の支払い能力の不足への対策です。これが本質的な問題です。A国、E共同体の問題です。

イ 金融機関の不良債権の買取り。今以上に金融機関の資本が毀損しないことを明確にするためです。これがないといつまで経っても不安が解消されません。

 国民には評判が悪いので、つい、後で損失が出たら金融機関に負担を求めるというスキームにしたくなりますが、それでは効果が薄い。

 次のロの公的資本の注入をやるなら、思い切って安く買い叩いてもいい。そのほうが将来の損失の可能性が低く、国民の理解を得やすいでしょう。唯、たたきすぎると体力のある優良な銀行が不良債権を売ろうとしない可能性があります。そうすると売るのはだめな銀行ということになってしまいます。これはかなりの難問です。

 ちょっと問題がありまして、E共同体には、中央銀行はあっても中央政府がありません。不良債権お買取は政府の仕事です。加盟国で対応が分かれるとやっかいです。

ロ 公的資本の注入 

イの金融機関の不良債権の買取りをやれば、簿価で買い上げるのではない限り、損失は必ず発生します。時価で買い取って売り手に損失が発生しないのなら不良債権ではありません。

損失が発生すれば資本が減ったのが表面化します。表面化であって、資本は既に減っています。資本が不足すれば、銀行は自己資本比率を維持するために貸付を減らさざるを得なくなります。

貸付が減れば、借入に頼って多額の金融資産を買っていた借り手の資金繰りは苦しくなり、株式、債権、その他の証券の投売りが発生し、それがさらに金融機関の資本を毀損します。

金融の収縮は、借金に頼って不動産に投資していた企業の資金繰りを悪化させます。不動産などの市況も悪化させ、貸付の担保の価値を減らす。これも金融機関の資本の毀損につながります。実体経済にも、運転資金の不足、投資資金の不足を通じて悪影響をもたらします。

断固として資本を注入すべきなのです。株主が抵抗して注入に抵抗し、時間がかかるなら株主に甘くなっても仕方がないでしょう。

ただし、国民の抵抗は最大です。金融機関の経営者の方々何人かに牢屋に入ってもらうことになるかもしれません。後で無罪になるかもしれないけれど。

資本注入の原資として国債の発行も仕方がないでしょう。

これにも問題があります。氷の島国のように国の規模に比べて銀行の規模が大きいと国力を傾けて資本注入しても足りないという笑い話のようなことが起こりえます。

3 一応、危機を乗り切ったときにやること

イ A国、E共同体の不健全な金融機関の秩序ある淘汰。清算、吸収合併、買収なんでもあり。(←J国の優良金融機関にとっては、事業拡大のチャンス。ただし、A国、E共同体の金融関係者に手玉に取られるおそれあり。)

ロ A国、E共同体の不良債権の回収。(←資金力のあるハゲタカにとっては、大もうけのチャンス)おそらくかなりの部分が失われるでしょう。公的資金投入のために発行した国債の返済負担が国民にのしかかります。

ノンリコースの貸し出しであれば、担保の売却による回収。(←不動産会社、ファンドにとっては、大もうけのチャンス。もし自分がつぶれていなければ。)住宅なら貸付でも可。

ハ A国、E共同体で行った危機の際の金融機関への貸し出しの回収。

 A国、E共同体で金融機関に注入した資本の市場での売却、金融機関からの返済による回収。金融機関が儲かるようにしてやったほうが回収はしやすいです。つまり、低金利政策で、家計から金融機関に所得を移転したほうがいいということ。

3を円滑に進めるためには、A国、E共同体の景気の維持が絶対に必要です。通貨を安く誘導し、輸出を拡大するのが最善です。J国はA国と、E共同体の貿易で黒字を出すのをあきらめ、A国の経済回復に協力すべきです。観光立国でA国、E共同体から人を呼ぼうなどと考えるのは時期が悪い。

A国、E共同体の国民が受け入れれば、減税、公共事業など財政出動も望ましい。

J国など外国の金融機関、中央銀行に奉加帳を回すのも可。わが国の通貨が暴落したらお前たちも困るだろうと居直る能力も国力のうちと割り切ろう。

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