手配師

長くなりますが、hamachanさんのブログ「良心的な手配師」からの第一の引用です。

自見氏は、ご自分が副医局長としてやってきたことを、金銭評価された私的利害を超えた公的な利益実現のために尽力する「良心的な手配師」と評しているわけです。

自見氏が手配師として良心的であったことを疑うわけではありません。自見氏以外にも、各医局には良心的な手配師の方々がいらして、まさにパブリックな観点から医療人的資源の適正配分に尽力されてこられたのでしょう。そのことを疑うわけではありません。

しかしながら、医局の人的資源配分が何らかの法律に基づく公的な労働力需給調整システムとしてではなく、医局という名の私的権力の「事実上の支配関係」に基づくものであったこともまた事実でしょう。

自見氏が「良心的な手配師」であったとしても、すべての手配師が良心的であったということにはなりません。むしろ、公的な規制に束縛されない私的権力であるが故に、「俺の云うことを聞かねえ奴は許さねえ」的な親分子分関係が蔓延していたというのもまた事の反面であろうと思われます。「白い巨塔」を始めとする医局モノ小説があれだけいっぱい書かれているというのは、医者の世界にそれだけトラウマが溜まっていると云うことを意味するのでしょう。

医局という私的権力が日本の医療を守ってきたのに、それを潰しやがって、という自見氏の反発には、医療を金銭評価された私的利害の市場による調整のみに委ねていいのかという意味においては、大いに聞くべき内容があるように思いますが、それが「昔はよかった」的なノスタルジーになってしまうとすれば、肯定するのは難しいでしょう。

引用終わり。

もうひとつ引用します。hamachanさんのブログ「労働市場改革専門調査会議事録 on 生活保護」からの第一の引用です。地方財政審議会の木村陽子さんが次のような発言をされているのの紹介から始まっています。

>何でこんなことを言うかというと、例のネットカフェも、だんだんビジネスが行き詰まってきて、日々でなくて 30日の長期間で4~5万円の使用料というコースも出てきた。そこで何をやっているかというと、住民票が取れるとか、郵便を受け付けるということをやった上に、就職支援もやるという。どこかを紹介して紹介料を取ろうという話かもしれないが。また、レンタルオフィス・ビルビジネスも、レンタルのネットルームとかいって1か月間小さな部屋を貸して、併せて就業支援を行うというビジネスを始めているという話も聞く。これらの決め手は就業支援、就職支援活動で、ネットカフェなどの方が職業訓練施設に行くよりも、彼らにとっては敷居が低くて入りやすいのではないかと思う。私はそこに一番のメリットがあるだろうと思う。職安にも来たがらない層がいるし、仕事は山谷や釜ヶ崎に行けばあるけれども、何となくあそこは近寄りがたいというところがあって、ネットカフェが一番いいということだろう。ネットカフェ等で就業支援等を担える層が出てくると、そこに支援のお金が出れば、もうちょっとスムーズに就業支援等が行われるのではないかという感じがしているが、そんな考え方は突拍子過ぎるか。

ジョブカフェよりもネットカフェというわけですか。貧困ビジネスと貧困対策は紙一重というところもあるのかもしれませんが。(これがhamachanのコメントです。)

引用終わり。

この木村先生の紹介されていることが事実なら、労働市場で歴史は繰り返すということです。

ネットカフェが「就業支援、就職支援活動」を通じて「私的権力」としてネットカフェ難民との「事実上の支配関係」を作り出しかねません。

具体的に言えば、宿と食事、日用品を提供し、仕事がなく、金がないときには「ツケ」を認める。小遣いが必要なら貸してやる。その代わりネットカフェが仕事を紹介したら、どんな仕事でも四の五の言わず働く。一度でも断ったら、これまでのツケを全部払え、貸した金を返せと要求され、一文無しで宿からも追い出される。それが恐ろしくて、ネットカフェの言うままになる。まさに、ネットカフェが「公的な規制に束縛されない私的権力」となり、「『俺の云うことを聞かねえ奴は許さねえ』的な親分子分関係が蔓延」するかもしれません。

別に根拠なくこういう予測をしているわけではありません。こういう仕組みは戦前にはよくあったのです。自信がないのですが、こういうものを宿舎型労働者供給事業というのではなかったでしょうか?

このシステムの恐ろしいところは、金を取って宿と食事、日用品を提供すること、仕事がなく、金がないときに「ツケ」を認めること、必要な小遣いを貸してやること、仕事を紹介すること、紹介した仕事を断られたら、これまでのツケを全部払うことを要求すること、貸した金を返せと要求すること、一文無しを宿から追い出すこと、これらすべてが合法であることです。一つ一つは合法なのだけれど、それらをあわせるととんでもない事態が起こるのです。

ま、非合法な手段として、言うことを聞かない奴には焼きを入れるということもあります。

こういう弊害を除去するために、二つの政策が打ち出されました。一つは「法律に基づく公的な労働力需給調整システム」、公営の職業紹介所を作ることです。もう一つが、民営の有料職業紹介所が、金貸しと宿泊業を兼業することを禁止することです。日本でも歴史の教訓を踏まえて規制がありました。

しかし、こういうものがありまして、この様な規制はなくなっています。

規制改革の推進に関する第2次答申

-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-

平成14年12月12日

総合規制改革会議

③ 有料職業紹介事業に関する規制緩和【次期通常国会に法案提出等所要の措置】

 すべての事業所に許可が必要としている現行の有料職業紹介事業の許可制は、手続の簡素化の観点から、法人としての許可があれば、事業所の設置は届出で済むよう許可制度を緩和することを含め、検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。なお、職業紹介事業に係る兼業規制については、これを原則として撤廃することも含め検討し、その結論を早急に取りまとめ、次期通常国会に法案の提出等所要の措置を講ずるべきである。

この会議の議長は、オリックス株式会社取締役兼代表執行役会長・グループCEO 宮内義彦さんでした。

今後、「法律に基づく公的な労働力需給調整システム」ではなく、貧困ビジネスに就業支援、就職支援活動委ねていいのでしょうか?彼らが「良心的な手配師」として行動することを期待して。

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