子供のいる労働者だけ賃上げ

労務屋@保守親父さんが、「賃上げは手当で」で松下電器が賃金引上げを全部子供を持つ従業員への手当てに振り向けるという記事を紹介されています。 労務屋@保守親父さんは、「昨年のように特定の年齢層とか、職能資格などに重点配分するのと、家族手当に配分するのとなにが違うのか、といわれれば違うともいえないかもしれませんが。昨年からよく使われるようになった『賃金制度改善分』というような言い方をするのであれば、手当への配分も賃金制度改善ではあるでしょう。賃上げは復活の流れですが、内容的にはかなり変化しているといえそうです。」とお書きなのですが、私も、非常に面白い賃金の配分の仕方だと思います。 ここ10年ほどの賃金制度は、大勢としては(賃上げを抑制しつつ)成果主義賃金へと流れてきていました。子供のいる従業員にだけ配分するというのは、まったく違う方向への転換です。 私は、以前、「児童手当 その4」で「賃金には社会的に見ていろいろな役割があります。企業の労使にとっては、正社員の賃金は生産、企業活動への貢献に対する報酬という面と労働者の生計費の源泉という機能を兼ね備えています。生計費に対する社会的な手当てがなされていませんでしたから、賃金から生計費保障という側面をなくすことはできなかったのです。」と書いたことがあります。 年功賃金制度は、ぼんやりと「生産、企業活動への貢献に対する報酬という面と労働者の生計費の源泉と生産、企業活動への貢献に対する報酬という面と労働者の生計費の源泉という機能を兼ね備えて」いました。これが成果主義賃金に転換してきたのは、荒っぽく言ってしまえば、賃金体系が「生産、企業活動への貢献に対する報酬という面」に純化してきたことを意味します。 家族手当や子供に対する手当は、純粋に「労働者の生計費の源泉という機能」を果たす賃金です。ですから、これを増額するというのは成果主義賃金への流れとはまったく別の流れなのです。しかも、賃金引上げ原資を全部これに投入するというのですから、半端ではありません。まぁ、たった千円じゃないか!という議論はあるかもしれませんが。 これが、賃上げ復活の過程でのエピソードとして終わるという可能性もあります。また、成果主義賃金+それなりの額の家族手当、子供扶養手当という形で、生産、企業活動への貢献に対する報酬という面と労働者の生計費の源泉という機能を兼ね備えた新たな賃金体系が作り出されていくという可能性もあります。 注目すべき動きです。来年以降もこういう動きが続くのかどうか、楽しみです。 それにしても、松下電器の労使の間では、どんな問答が行われていたのでしょうか?また、労働組合内部ではどんな議論が行われていたのでしょうか?報道されていないのが残念です。 人気blogランキングでは「社会科学」の27位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング