再チャレンジ

少し古い話ですが、「雇用破壊」を特集した週刊東洋経済の1月13日号。なかなかの力作でした。

この中で、すこしひっかったのが、ここです(48ページ)。

「一方で、キャノンの中途採用情報には、当時一行の注意書きが添えられていた。『派遣社員等で現在キャノンに勤務中の方の参加はご遠慮下さい。』。つまり非正社員の直接雇用を避けたいあまり中途採用への応募も門前払いしていたのだ。」(強調は平家)

これは本当の理由なのでしょうか?

優秀な非正規社員であれば、採用してもいいはずです。その非正規社員がいる職場では、採用と同時に穴があくことになりますが、そう大した問題ではないでしょう。

むしろ、職場で働いている正社員に見極めさせて、優秀な非正規社員を選んで正社員にした方が、当たりはずれがなくていいはずです。優秀だと思って採用した正社員がはずれだったということは良くあるのですから。

合理的な企業であれば、敢えて差別をするわけがありません。

ですから、非正規社員であったことを理由として採用において不利に取り扱ってはならないなどという規制は本来不要であるはずです。そういう提案も聞いたことがありません。

では、なぜ、キャノンはこのようなことをしていたのでしょうか?

想像ですが、キャノンは派遣会社、請負会社との関係に配慮していた可能性があります。

派遣会社、請負会社の立場からするとキャノンに派遣したら、請負会社からするとキャノンの仕事を請け負ったら、優秀な社員がキャノンに転職してしまうというのは困るでしょう。

キャノンも派遣会社、請負会社に忌避されるとまずいですから、そういう会社の立場にも配慮して、転職希望者を受け入れないことにすることにするということはあり得そうです。

契約相手の立場を尊重するというのはいいことです。第三者の正当な利益を侵害していなければ。

派遣社員、請負会社の社員の立場はどうなるでしょうか?ほとんどは有期契約のはずで、契約期間が満了すれば、その後どこで勤めようが自由であるはずです。会社側も契約期間が満了すれば、契約を延長する義務はありませんから、当然のことです。

労働者の立場に立てば、派遣会社、請負会社に勤務したら、就職の幅が狭められるのではたまったものではありません。

とりわけ、そういう立場の労働者が自分の能力をアピールできるのは、まじめに働くことによってです。まじめに働いたことを一番良く知る立場にある派遣先、請負先や派遣会社、請負会社です。そういうところによって正社員への道を狭められるのは困ります。再チャレンジどころではありません。

社会的に見ても、労働者の移動がスムーズに進むことは望ましいのです。

たとえ、会社に都合があるからと行って、有期契約労働者の将来まで制約してはいけません。

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