11月の貿易収支黒字大幅増加

10月の貿易収支黒字幅は再び縮小」で書いたように、10月は貿易収支の黒字が前年同月25.6%減少したのですが、11月(速報)は大幅な拡大です。54.1%も増加しました。 11月までの累計額を見ると、貿易収支の黒字(バランス)は、昨年と比べると10.4%ほど減っています。減少額は、8、143億円ほどです。この調子で行くと2006年の貿易収支の黒字は7兆円代後半、あるいは8兆円を超す水準になりそうです。相当低い水準に戻ってしまうものの、2001年の6兆6千億円よりは、大分ましと言うことになります。 前半の原油高が収まってきたことと、円安の効果だろうと思いますが1年間を通じて輸出が好調であったことが、この結果をもたらしたと言えるでしょう。
貿易収支バランス(百万円、%)
バランス増加額増加率
2000年10,715,775
2001年6,563,711-4,152,064-38.7
2002年9,881,4503,317,739+50.5
2003年10,186,327304,877+3.1
2004年11,953,3431,767,016+17.3
2005年8,707、152-3,246,191-27.1
2005年11月まで7,798,843
2006年11月まで6,984,547-814,296-10.4
注 輸出は、FOB価格、輸入はCIF価格です。輸出入には国境の間を輸送しなければなりません。このため、運賃がかかります。また、運送の際の事故に備えた保険料もかかります。FOB価格には、このような運賃、保険料、輸入関税を含みません。従って、輸出品を日本の港(又は空港)まで運んで引き渡したときの価格です。一方、輸入に使うCIF価格は、日本の港(又は空港まで)運ばれた輸入品の引き渡しを受けるときの価格です。運賃や保険料、輸入関税を含んでいます。輸入もFOB価格にすると、相手国の港(又は空港で)受け取るときの価格で計算することになります。国境間の運賃、保険料の分だけ安くなります。 この表で国際収支統計では、輸出にも輸入にもFOB価格を使っています。従って貿易統計と国際収支統計を比べると輸入額は貿易統計の方が多めに示され、貿易収支の黒字は少な目に示されています。 貿易統計を紹介している理由は二つあります。 まず、発表が早いことです。もう一つは、日本国内の雇用への影響ではこちらの方がいいと思われるからです。というのは、海上交通などには、日本人があまり従事していないからです。 累計で見れば黒字は減っていますが、輸出は15.1%と高い伸びとなっています。すでに、2005年の実績を超えています。
輸出(百万円、%)
輸出額増加額増加率
2005年65,656,544
2005年11月まで59,319,478
2006年11月まで68,295,7348,976,25615.1
輸入は20.3%増えています。原油や原料中心です。
輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年56,949,392
2005年11月まで51,520,634
2006年11月まで61,311,1879,790,55319.0
原油、粗油の輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年8,823,323
2005年11月まで7,857,308
2006年11月まで10,529,8852,672,57734.0
原油、粗油の輸入額は、34.0%増加しています。量は0.8%ですが減っています。1リットルあたりの単価が34.9円から47.1円へ12.3円、35.1%高くなっています。 しかし、11月だけを見ると、単価は前年の42.3円から44.4円へ、2.2円、5.2%上がっているだけです。9月は52.9円、10月は47.8円でしたから、着実に下がってきています。 今後、大幅に輸入額が増えることはなさそうです。場合によれば前年に比べて減る局面があるかもしれません。 1月から11月までの輸入の増加の27%は、原油、粗油の輸入の増加によるものでした。この重しがなくなり、交易損失が減っていけば、生産の拡大に所得の拡大が近づいて来るでしょう。消費や景気にとってはいいことです。 人気blogランキングでは「社会科学」の22位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング