経済政策の売り込み

政策目標としての潜在成長率の政治的利点」のコメント欄でのお話の続きです。 経済学者は、いい経済政策、つまり国民の所得を上げたり、失業率を下げたり、所得の分配を改善したり、要するに国民を幸せにする経済政策を提案します。所謂、「シバキアゲ政策」を主張する方も、最終的にはそれが最終的には国民を幸せにすると考えるから、「シバキアゲ」を主張されるのであって、「シバキアゲ」そのもののために「シバキアゲ政策」を主張することはありません。これが素人だと、道徳的に正しい経済政策を主張したりすることがありますが、経済学者はそういうことはしません。普通はです。 で、政策を考えたら、啓蒙を通じて、政策の採用を訴えるわけです。それを他の人に任せる方も多いでしょう。 では、誰に売り込むかと言えば、政策を決定できる人にです。最近は政治家が対象になることが多いようです。もちろん野党の政治家という場合もあります。 では売り込みを受ける政治家というのはどういう選好を持っているか?政策の中身が良ければそれでのだろう。なぜなら、国民が幸せになれば選挙でも勝てる。選挙に勝つことを目指す政治家は良い政策を採用するはずだ。こう考える、あるいは無意識のうちにそう思い込む経済学者は多いでしょう。 でも、そうでもないんではないかと思うことがあるのです。大体選挙といっても、大事なのは次の選挙なのです。次の選挙が1年後だと、その時に国民が幸せになっていないと困るのです。いずれは効果が出る経済政策では困るのです。 経済政策を採っているだけで、まだ効果は出ない、そういうときに選挙に勝つためには、有権者わかりやすい政策有権者にすればよく分からないけれど、何となく良さそうな気がする政策でなければなりません。 「書籍のタイトルが売り上げを伸ばす」のですから、経済政策にもいい名前を付けなければなりません。 その意味では、「上げ潮政策」というのは、100点ではないけれど、70点ぐらいは上げてもいいのじゃないかと思います。海のイメージは悪くない。それにゆったりとしていてそう厳しさも感じさせません。ただ、方向は上でなければなりません。同じ潮でも「引き潮政策」はまずいです。 厳しい政策にも少し飽きてきたし、財政再建ばかり言われてもね。増税はいやだし。財政再建なんて漢字ばっかりの、四角四面でいかにも堅そうなのは、今の空気にはどうも合わない。(それが分かっている人が「スリム化」といった表現を使うのでしょう。) かといってイケイケドンドンといった政策を提案されると、どうもね。いまの時代そういう気分ではない。 こういう風に考えると、「上げ潮政策」にはほどの良さがあるのですね。何となく前向きで、増税をしなくていいようなイメージもあります。週刊新潮も、親近感から支持してくれるかもしれない。冗談です。 インタゲ政策というのは、どうも響きが良くない。怪獣の名前ならいいかもしれない。怪獣インターゲなんて、何となくありそうな気がする。 リフレ政策は、インタゲ政策よりも随分響きが良い。ラ行の音というのはよく使われるのですね。るるぶという名前の雑誌もあったような気がします。 ただ、最近は和風の強くなってる時代で、カタカナ全盛期はもうずっと前に終わっています。かといって、再膨張整策なんて言ったら、まず、選挙に勝てません。メタボリックを連想させます。絶対に女性に受けません。いっそ、ほどほど前向き政策と訳したらどうでしょう?違いすぎますか。 それに、リフレというのは、少し政策の名前という気がしない。化粧品ならいいかもしれませんが。「チフレ」というシリーズがなかったでしょうか? どうしてもリフレという言葉を使いたいなら、ネーミングはリフレッシュ政策の方がいいんじゃないでしょうか? 意味にこだわるならデフレ完全脱却政策というのはどうでしょう。 もちろん、「『わかりやすい』は危うくないか?」と問われれば、その通りだと思うし、「名前が良ければそれでいいのか?」と聞かれれば、そんなはずはないだろうと、返事するのですが。 人気blogランキングでは「社会科学」の24位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング