若者の就職-19年3月卒 その4

若者の就職-19年3月卒 その3」で書いたように、日本全体では高校生に対する求人が求職を上回っています。ですから、もし卒業する学校から遠く離れたところに就職する気になれば、就職の口がないわけではありません。「若者の就職-19年3月卒 その1」で、書いたように11年3月卒から18年3月卒までは就職口が、日本全体でも不足していたのに比べると自分改善されています。

また、求人が不足している北海道、東北、山陰、四国、九州は概して言えば賃金の低い地域です。

では、多くの高校生達が就職、そしてよりよい賃金を求めて移動するかと言えばそれはそうではないだろうと思います。

高校生たちの選択をモデル化して考えると、こうなるでしょう。

異動した場合に得られる所得がどれくらいか?これには初任給だけではなく、将来の所得も含まれます。

移動した先で必要となる生活の経費はどれくらいか?

移動した先、多くの場合は都会です、の持つ金銭的なもの以外の魅力はどれくらいか?

地元で就職した場合に得られる所得がどれくらいか?これにも初任給だけではなく、将来の所得も含まれます。女性なら自分が、男性なら将来の妻が、親と同居するか近くに住むと子供ができたとき働きやすいと言うことも考えなければなりません。また、将来親を介護する必要があれば、地元であれば仕事と介護を両立しやすいという利点は非常に大きくなります。

地元で必要となる生活の経費はどれくらいか?親と同居すれば経費は非常に安くなるでしょう。もし、親が持ち家で、それを引き継げるならかなり楽でしょう。

地元の持つ金銭的なもの以外の魅力はどれくらいか?これは、地元が他の土地の出身者にも持つ魅力と、そこ地元であるが故の魅力に分けられます。例えば、札幌や仙台などは地元でない人間にとっても魅力を持つでしょう。また、そのような普遍的な価値とは別にそこで生まれ育ったゆえにそこに魅力を感じると言うことがあります。この二つは別物です。

こう考えると、もし、

異動した場合に得られる所得-移動した先で必要となる生活の経費+移動した先の持つ金銭的なもの以外の魅力<地元で就職した場合に得られる所得-地元で必要となる生活の経費+地元の持つ普遍的な魅力+地元なるがゆえに持つ魅力

であれば、地元での就職を選ぶはずです。この選択は合理的です。

必ずしも、賃金だけで決めるわけではありません。

さて、ここで考えなければならないのは、生徒たちの家庭内の地位です。もし、一人っ子、あるいは長男、長女であれば地元に残るメリットは大きなものになります。

そして、厚生労働省の人口動態統計によると、平成2年(1990年)生まれ、122万人のうち、53万人(43.5%)が第一子で、第二子が46万人(37.6%)です。(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei05/hyo4.html

長男、長女の割合は非常に高いのです。地元志向が強くなるのは当然です。

地方に職場を作ることは、金銭であらわされた個別企業の生産性を悪化させるのかもしれませんが、国民の厚生という視点に立てば、必ずしも不合理な選択ではありません。

人気blogランキングでは「社会科学」の26位でした。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング