9月も貿易収支黒字幅は改善

「7月の貿易収支黒字」について」で、8月は貿易収支の黒字が2005年8月の2倍近いものになったと書きました。 9月(速報)も貿易黒字は前年より改善しました。輸出が17.7%増加と高い伸びになり、輸入は16.1%増加にとどまったためです。 黒字幅縮小という基調が転換しつつあるのかもしれません。景気にとってはプラスです。 9月までの累計額を見ると、貿易収支の黒字(バランス)は、昨年と比べると14%ほど減っています。減少額は、9千億円強です。
貿易収支バランス(百万円、%)
バランス増加額増加率
2000年10,715,775
2001年6,563,711-4,152,064-38.7
2002年9,881,4503,317,739+50.5
2003年10,186,327304,877+3.1
2004年11,953,3431,767,016+17.3
2005年8,707、152-3,246,191-27.1
2005年9月まで6,386,560
2006年9月まで5,465,553-921,007-14.4
注 輸出は、FOB価格、輸入はCIF価格です。輸出入には国境の間を輸送しなければなりません。このため、運賃がかかります。また、運送の際の事故に備えた保険料もかかります。FOB価格には、このような運賃、保険料、輸入関税を含みません。従って、輸出品を日本の港(又は空港)まで運んで引き渡したときの価格です。一方、輸入に使うCIF価格は、日本の港(又は空港まで)運ばれた輸入品の引き渡しを受けるときの価格です。運賃や保険料、輸入関税を含んでいます。輸入もFOB価格にすると、相手国の港(又は空港で)受け取るときの価格で計算することになります。国境間の運賃、保険料の分だけ安くなります。 この表で国際収支統計では、輸出にも輸入にもFOB価格を使っています。従って貿易統計と国際収支統計を比べると輸入額は貿易統計の方が多めに示され、貿易収支の黒字は少な目に示されています。 貿易統計を紹介している理由は二つあります。 まず、発表が早いことです。もう一つは、日本国内の雇用への影響ではこちらの方がいいと思われるからです。というのは、海上交通などには、日本人があまり従事していないからです。 累計で見れば黒字は減っていますが、輸出は16.0%と高い伸びとなっています。
輸出(百万円、%)
輸出額増加額増加率
2005年65,656,544
2005年9月まで47,495,331
2006年9月まで55,071,4757,576,14416.0
輸入は20.7%増えています。原油や原料中心です。
輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年56,949,392
2005年9月まで41,108,771
2006年9月まで49,605,9228,497,15120.7
原油、粗油の輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年8,823,323
2005年9月まで5,215,454
2006年9月まで8,812,8502,530,10841.4
原油、粗油の輸入額は、41.4%増加しています。量は2.0%しか増加していませんが、1リットルあたりの単価が33.2円から47.3円へ14.5円、42.6%高くなっています。 1月から9月までの輸入の増加の30%は、原油、粗油の輸入の増加によるものです。 今後の見通しですが、明るい材料として原油の国際相場が反落したことが第一です。2005年9月からは単価が41.2円でした。9月の単価は52.9円です。上昇率は11.8%まで小さくなりました。今後、円建ての単価が安定すれば、貿易バランスへの影響は小さくなっていくはずです。 原油、粗油の輸入の影響を除いた貿易バランスの悪化幅も小さくなってきています。 今後改善すればいいのですが。特に、「「8月の機械受注統計」」で書いたように、貿易黒字と並ぶ景気の柱、設備投資の先行指標である機械受注が怪しい動きになっていますから、余計に期待がかかります。 人気blogランキングでは「社会科学」の27位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング