景気回復と労務管理 その1

長期不況期の労務管理には、二つの特徴があったように思います。一つは、かなりの職種について有期契約社員派遣労働者など非正規労働者の活用したこと、もう一つは、即戦力の人材の採用です。ある部分について内部労働市場ではなく流動的な外部労働市場を活用する労務管理であったとも言えます。これを平成長期不況型労務管理と名づけましょう。以前のものを昭和型労務管理と名づけることにします。

当たり前のことですが、こんな労務管理の転換ができたのは、幾つかの条件があってのことです。まず、正規労働者の口がないので仕方なく非正規労働者を選ばざるを得ない労働者が大勢いたことです。主婦のパートタイム労働とは性格が違います。もう一つは、既に企業の中で経験を積み、即戦力となりうる人材が、解雇されたのか自己都合で辞めたのか、事情はさまざまでしょうが、求職活動をしていたことでしょう。

さて、いかに緩やかであるとは言え、長期間景気回復が続いていると、徐々にではありますが、労働市場はタイトになって来ます。

このとき平成長期不況型労務管理は、どうなるのでしょうか?極端な場合を考えると、二つの可能性があります。一つは、元の内部労働市場型の昭和型労務管理への回帰が起こると言う可能性です。もう一つは平成長期不況型労務管理が続くと言う可能性です。どちらになるか決める要因はさまざまでしょうが、一つのポイントは外部労働市場が十分に発達して、もはや縮小することがない段階に達しているのかどうかです。

ほとんどの企業が、外部労働市場方の労務管理を続けると決めてしまえば、外部労働市場が続くことになります。多くの企業が、正社員採用を開始し、企業内部での育成を重視するようになれば、内部労働市場の復活です。

より正確に言えば企業には、内部労働市場の部分と外部労働市場の部分が混在しているのですから、その比率の変化と言うほうがいいのですが、ここは簡単化のために、こういう表現をしておきます。

どちらになるかと聞かれれば、外部労働市場で賃金が高くなるだろうから、少しは元に戻るだろうとお答えすることになります。いくつかの実例の報道を労務屋さんが紹介されています(http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20061019)。しかし、私の予想が当たるかどうかはたいした問題ではありません。どちらになっても、多くの企業は対応していけるのではないかと思います。そのために労務屋さんがいるのですから。ただ、経験が浅くて不況しか知らない労務屋さんたちは、少しキツイ目に会うかもしれませんが、それも将来の糧となるいい経験でしょう。それに正規労働者を非正規労働者にしようとすると、本人の抵抗は大きいですが、非正規労働者を正規労働者にするのは、そんなに抵抗はないはずです。まあ、日本経済全体ということであれば、私はあまり心配はしていません。

ただ、少し気になる部分がないわけではありません。低賃金の非正規労働者が大勢いると言うことを前提にしている企業、業態です。

(続く)

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