「7月の貿易収支黒字」について

統計 貿易 経済
「7月の貿易収支黒字」の続きです。 ８月（速報）の貿易黒字は前年の２倍近い数字になりました。輸出が１７．７％増加と高い伸びになり、輸入は１６．１％増加にとどまったためです。ただ、８月は例年貿易黒字が小さな月です。２００５年の例では１年間の黒字のうち８月分は、１．２％だけでした。このためわずかな変化が前年比の伸び率を変えます。黒字縮小基調が反転し、この調子が来月以降も続くとは言えません。 なお、この数字は速報です。確報で数字が変わる可能性があります。特に伸び率には大幅変更の可能性が残っています。 ８月までの累計額を見ると、貿易収支の黒字（バランス）は、昨年と比べると１８％ほど減っています。減少額は、１兆円弱です。
貿易収支バランス（百万円、％）
年バランス増加額増加率
２０００年１０，７１５，７７５－－
２００１年６，５６３，７１１－４，１５２，０６４－３８．７
２００２年９，８８１，４５０３，３１７，７３９＋５０．５
２００３年１０，１８６，３２７３０４，８７７＋３．１
２００４年１１，９５３，３４３１，７６７，０１６＋１７．３
２００５年８，７０７、１５２－３，２４６，１９１－２７．１
２００５年８月まで５，４３７，９６６－－
２００６年８月まで４，４５７，２１９－９８０，７４７－１８．０
注　輸出は、ＦＯＢ価格、輸入はＣＩＦ価格です。輸出入には国境の間を輸送しなければなりません。このため、運賃がかかります。また、運送の際の事故に備えた保険料もかかります。ＦＯＢ価格には、このような運賃、保険料、輸入関税を含みません。従って、輸出品を日本の港（又は空港）まで運んで引き渡したときの価格です。一方、輸入に使うＣＩＦ価格は、日本の港（又は空港まで）運ばれた輸入品の引き渡しを受けるときの価格です。運賃や保険料、輸入関税を含んでいます。輸入もＦＯＢ価格にすると、相手国の港（又は空港で）受け取るときの価格で計算することになります。国境間の運賃、保険料の分だけ安くなります。 この表で国際収支統計では、輸出にも輸入にもＦＯＢ価格を使っています。従って貿易統計と国際収支統計を比べると輸入額は貿易統計の方が多めに示され、貿易収支の黒字は少な目に示されています。 貿易統計を紹介している理由は二つあります。 まず、発表が早いことです。もう一つは、日本国内の雇用への影響ではこちらの方がいいと思われるからです。というのは、海上交通などには、日本人があまり従事していないからです。 累計で見れば黒字は減っていますが、輸出は１６．１％と高い伸びとなっています。
輸出（百万円、％）
年輸出額増加額増加率
２００５年６５，６５６，５４４－－
２００５年８月まで４１，５６８，２２２－－
２００６年８月まで４８，２４０，３２２６，６７２，１００１６．１
輸入は２１．２％増えています。原油や原料中心です。
輸入（百万円、％）
年輸入額増加額増加率
２００５年５６，９４９，３９２－－
２００５年８月まで３６，１３０，２５６－－
２００６年８月まで４３，７８３，１８６７，６５２，９３０２１．２
原油、粗油の輸入（百万円、％）
年輸入額増加額増加率
２００５年８，８２３，３２３－－
２００５年８月まで５，２１５，４５４－－
２００６年８月まで７，７４４，６９１２，５２９，２７３４５．３
原油、粗油の輸入額は、４５．３％増加しています。量は２．２％しか増加していませんが、１リットルあたりの単価が３２．１円から４６．６円へ１４．５円、４５．３％高くなっています。 １月から８月までの輸入の増加の３３％は、原油、粗油の輸入の増加によるものです。 今後の見通しですが、明るい材料として原油の国際相場が反落したことが第一です。２００５年９月からは単価が４０円台に乗っています。８月の単価５２．３円が続けば、単価の上昇率は１０％程度に収まります。円建ての単価が安定するかどうか注目です。 人気ｂｌogランキングでは「社会科学」の３５位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング