地方の若者の職場 その2

地方の若者の職場 その1」に、hamachanさん、rascalさんを始め皆さんから多数のコメントを頂きました。そのお返事を兼ねて前回の続きです。

hamachanさんが指摘されているように、企業が地方へ進出する可能性は確実とはいえません。かと言って、地方の若者が「取り残され、忘れられた存在に」なって「個別に都会に出て行く」いくのを放置するわけには行きません。また、高度成長期の地方から都市部への広域移動は、移動した後の定住に繋がりましたが、派遣や業務請負による移動は放浪になりかねません。

そこで、地方への立地の可能性として私がもう一つ考えているのは、高齢者を顧客とする産業です。hamachanさんが指摘されているように、人口が減り始めているのも事実です。しかし、総人口は減っても、高齢者は増えています。地方では若者の割合が低く、高齢者の割合が高いのですから、若者を顧客とする産業より、高齢者を狙うほうが自然です。若者の争奪戦では、もう勝負がついています。再チャレンジを試みても体力を消耗するだけです。

日本全体で、65歳以上の高齢者が、2割を超えています。地方では25%というところもあります。

高齢者は、必ずしも所得が低いわけではありません。公的年金の恩恵を十分受けている層もかなりいます。彼らは、若者とは違うものを求めています。若者が住みやすい町つくりよりも、高齢者が暮らしやすい町を作ることを考えるべきです。

医療、介護などは有望です。これらは全国的な社会保険制度が背景にあるので、地方にも十分お金は回ってきます。

これからは地方での公共事業は、rascalさん言われるところの「非効率な財政政策」とみなされ、国民からの政治的支持は集まりにくいでしょう。それよりも社会保障社会保険を通じた地方への資金再配分の方がはるかに有望です。こちらであれば地方優遇と言う批判は受けにくいでしょう。全国どこに高齢者がいても支出は必要なのですから。

なお、効率の高い公共投資が全くないとは思っていません。

また、医療、介護は比較的、労働集約的で雇用拡大効果が大きい産業です。若者の雇用に繋がります。また、保険制度で支えられているので、販売代金の回収に不安はありません。利益はそれほど出ませんが、地方での若者の職場確保が主目的であれば、ローリスク、ローリターンで問題はありません。生まれ故郷で生活することのメリットや兼業も考えれば、それほど高い収入が得られなくともいいのです。。

高齢者向けということであれば、商業でも御用聞き、宅配などのシステムの充実も考えられます。一人分の販売といった工夫も必要でしょう。商業立地にも工夫が必要です。できるだけ高齢者が移動しやすい交通システムを街づくりの基本にすべきです。自動車の運転も徐々に負担になっていくでしょう。歩道の幅を広げ、段差を少なくし、できれば自動車、バスよりも地下鉄のほうが良いような気がします。

これらを実施するためには、高齢者が中心市街地に自然に集まって住むような仕組みが必要です。広い地域に散在していては、サービスが提供しきれません。その点で、この手は地方拠点都市、県庁所在都市か、それに次ぐ規模の町しか使えないでしょう。地方での集中はある程度やむを得ないでしょう。それが集積に繋がるかもしれません。

なお、人口を増やすと言う点では、若者ではなく、実家の両親の介護のために地元に帰るという女性が有望です。夫を連れて帰ってくるかどうかは分かりませんが、「私は、地元に帰る。あなたは付いて来ても良いし、一人暮らしをしても良い。」といわれたらついてくる夫もいるでしょう。逆は、まずありません。狙いは、あくまで地元出身の女性です。都市部の家を売れば、地方で改築なり新築は容易です。また、職場への通勤のことを考えなくても構いません。転居の負担は大きくないはずです。

高齢者の持つ資金、高齢者のために支払われる国の資金、これを中心に街づくりをするのが、地方にとっては一番有望です。

そう考えれば、地方は都市部に住んで、働いている世代にもっと負担をさせ(国庫負担です)、高齢者のための社会保障制度を維持する戦略を採用すべきです。また、地方で勤務する若い看護師や介護労働者の賃金の引き上げを率先して主張すべきです。これは明らかに福祉国家の方向の施策であり、公の役割の拡大ですから、ネオリベラルとの政治的な対立を生む可能性は高いでしょう。

人気blogランキングでは「社会科学」の29位でした。クリックありがとうございました。ここをクリック ↓お願いします。

人気blogランキング