労働供給はなぜ需給に反応しないのか その2

労働供給はなぜ需給に反応しないのか その1」では、普通の経済学の外にある理由を持ち込みました。ルール違反なのか、モラルサイエンスとしての経済学なら許されるのか、よく分かりません。

次の理由は、それに比べると伝統的なのではないかと思います。

企業がかなり長い最低労働時間を決定できる、という仮定の導入です。

実態を見れば、現在の日本では、パートタイム労働者を除き、労働時間は企業が決めます。そして、ほとんどの場合、一日7時間以上です。まあ、社員一人一人の労働時間が全部違っていては、能率が悪化するなど、様々な理由があるのでしょう。

さて、労働時間を企業が決めていて、それが一日7時間ないし8時間となっているとき、労働者は働くか、働かないかをどのように決めるのでしょうか?

まず、労働時間と所得の組み合わせを考えてみます。労働時間ゼロの時は所得ゼロだと考えます。これより条件が良くないと働きません。今、企業が決めた労働時間をHとします。Hと組み合わせると労働時間ゼロ、所得ゼロと無差別になる所得をYとします。

するとYをHで割った時間当たり賃金Y/Hが基準となります。賃金率がこれより高ければ働きますし、それに満たないときは働きません。

この値は人により違うのですが、一般的に言えば、ある程度の値、それほど低くない値であればほとんどの労働者が働くという選択をするでしょう。所得がなければ暮らしていけないのですから。

この値が企業の申し出る一般的な賃金率よりも高ければ、労働者は常に労働を供給することになります。需給にはそれほど敏感に反応しないことになります。

なお、この場合労働者はコーナーソリューションの常態にあるので、これ以上賃金率が上がれば、すぐに労働時間を増やそうとするとは限りません。

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