2006年1-3月国内総生産速報 その3

2006年1-3月国内総生産速報 その2」にで書いたように輸出品(前回の例でいえば自動車です。)の価格に比べて輸入品(同じく、原油及び粗油です。)の価格が相対的に上昇することを、「交易条件の悪化」と呼びます。

今回の交易条件の悪化は、輸出価格があまり変わらないのに輸入化価格が相当上昇すると言うことによって起こっています。そこで、輸出や輸入の量があまり変わらないのに名目で計算すると純輸出は減少しているのです。

では、何故、実質で計算すると純輸出は増加しているのか?やや荒い説明になってしまいますが、単純に考えれば、「実質」の計算というのは、「価格不変」を前提にしたものですから、輸出品と輸入品の相対的な価格の変化はなく、その影響は反映されないのです。そこで問題になるのは「量」で、これは輸出が輸入より大幅に増加していますから、純輸出は増加するのです。

 

さて、次の問題は、「交易条件が大きく変化しているときに、経済の実態を何で捕らえたらよいのか?」です。

普通、経済の実態を比較するには、実質値で考えます。今回のQEの報道も、実質成長率に関心が集中していました。

これは理由のないことではありません。実質国内総生産(GDP)は、国内に住んでいる人間がどれだけ生産したかを示しており、これは普通は国内に住んでいる人間の所得、国内総所得(GNI)つまり購買力に等しいからです。どれだけのものを作ったかと言うことは雇用に直結しますし、どれだけ所得があるかは、経済的な厚生を示す基本的な指標です。

しかし、交易条件に変動がある場合は,実質GDP=実質GDIという等式が成立しません。輸出品と輸入品の相対価格の変動に伴う購買力の変化が反映されていないからです。純輸出の正体が購買力であったことを思い出してください。

(続く)

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