再びhamachanさんのコメントにおこたえして

「大学教育の基本的レリバンス」へのhamachanさんのコメントについて」についてhamachanさんから再度のコメントをいただきました。

少し、誤解を招くような書き方をしてしまったようです。

私は、本田先生の今回のご意見、つまり哲学や国文学を教える際にも職業レリバンスを意識して、授業などを組み立てることができるし、有効なのだからそうするべきだというご意見(私が誤解しているかもしれません。)に必ずしも賛成ではありません。そのような教えかたが常に有効であるとは限らないと思っているという意味です。有効な場合も、もちろんあります。「発展させた」という表現が悪かったのかもしれませんが、同じ方向でさらに主張を進めたと言う意味ではなく、別な方向に進めたつもりです。

私は、大学の先生方が学生を教えるとき、常に職業的レリバンスを意識する必要はないと思っています。勿論、医学、薬学、工学など職業に直結した教育というものは存在します。そこでは既にそういうものが意識されている、というよりは意識しなくても当然のごとくそういう教育がなされているのです。法学部の一部もそういう傾向を持っているようです。

問題は、むしろ、柳井教授が指摘されているように経済、経営、商などの学部や人文科学系の学部にあるのです。

現在の日本の大学の学部教育で、学んだ学問と職業が連動しにくい分野はあります。特に人文科学系の学問(大学の歴史をたどればこれが本家本元に近いでしょう。)は、学者、ないしそれに近い知的な職業につくケースを除けば、それほど職業に直結していません。ですから、そういう学問を教えるときに職業的レリバンスを意識しても、やれることには限界があります。無駄な努力だとまではいいませんが。

私の提案した「その主張の根拠を明示して、自分の主張を明確に述べるスキル」を身に付けると言うのは、職業能力、あるいは特定の職業に就くための能力として考えているのではありません。職業を超えて社会人として必要な能力です。これなしに、有能な職業人になれない職業分野は多々あるでしょうから、就職の際、あるいは働いているときに役に立つでしょう。しかし、私は、もっと一般的な能力として大学で身につけさせてはどうかと言うことを申しあげている訳です。

採用する側も、大学の学部時代に何を学んだかは、あまり気にしていないと思います。むしろ、私の提案している一般的な能力の方を重視するような気がします。これについては本田先生のブログ(http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20060414#p2)で紹介されている企業人の発言が傍証です。

さりとて、採用されやすくするために大学でそういうことを教えろといっているのではありません。職業に就かせることだけが大学の役割ではないのです。社会人としての知的なたしなみを身につけさせる場であれば、私はそれで十分意義があると思います。

こういうことができない人が多すぎる世の中、あるいは何かを他人に主張するときには、せめて一つぐらいは理由を示さなければならないと全然考えもしない人が多すぎる世の中は、住みにくいのです。私には。

なお、本田先生の問題意識は、教える側がなにをするべきか?であって、若者に職業、就職を目指して大学で学べと主張されているのではないはずです。

(ご本人に来てみないと確かなことは分かりませんが。)

従って、大学で哲学や国文学を選んだ人間に、本田先生が「人生捨てる気?」というはずがありません。

いっていただく必要もないでしょう。別に全員が学者になろうとしているわけでもないでしょうし、関心があるからちょっとやって見るでもいいじゃありませんか。それで絶対就職できなくなるわけではありませんし。授業料相応に授業をする義務を果たしていれば、授業料を取ることが搾取ということにはならないでしょう。

人気blogランキングでは「社会科学」の36位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング