もう少し考えて 毎日新聞

毎日新聞の社説について二度記事を書きました。

最初がこれです。「唐様で売り家と書けばいいのでしょうか?毎日新聞

次がこれです。

進化した毎日新聞」について

4月6日に、また、社説が書かれています。これです。

http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060406ddm005070030000c.html

ここでは、政府資産の売却は「奇手まがいのこと」になっています。最初の社説の「有力な手段」からずいぶん評価が変わっています。このような変化にはさまざまな評価があるでしょうが、私は正しい方向への変化であればかまわないと思います。

 もうひとつ評価できるのは、どうやら、財政再建国債残高を名目GDPの一定割合にとどめるか、この割合を下げることと理解しているらしいことです。

 このように評価できる社説なのですが、もう少し考えてもらいたいことがあります。

 「名目長期金利が名目成長率を上回るという前提条件は当然のことである。」「名目長期金利4%、名目成長率3%・・・・は確度の高いシナリオなのである。」と主張しています。

 もしそうであるならば、名目GDPに対する国債残高の比率を一定に保つためには、基礎的財政収支を黒字に保たなければなりません。

 必要な黒字の額は国債残高×(名目長期金利-名目成長率)です。

 注 この式の説明は「「「「ちょっと変だよ、日経新聞 基礎的財政収支」について」の補足」について」にあります。

 社説の言う確度の高いシナリオを取れば、名目長期金利と名目成長率の差は1%です。そこで、必要な基礎的財政収支の黒字額は、国債残高×1%の6兆円でしょう。

 現在の基礎的財政収支は、約15兆円の赤字です。すると、少なく見積もっても20兆円以上の財政収支を改善する必要があります。

 さて、社説は「07年度予算編成でできる限り歳出削減を試みることだ。・・・そうしたことを突き詰めてこそ、税制改正が現実のものとなってくる。」としていますから、歳出削減と増税によって、基礎的財政収支を20兆円以上改善することを目指しているように思われます。

 私が毎日新聞に検討してもらいたいと思うのは、こういうことです。

 仮に基礎的財政収支を20兆円以上改善したとき、名目長期金利は4%に、名目成長率は3%になるのでしょうか?

 財政と無関係に名目長期金利や名目成長率が決まるのであれば、問題はありません。司会、通常、財政の動きは経済の動きに影響を与えます。20兆円の改善はかなりの財政引締めです。また、所得の分配にもかなりの影響を与えます。

 名目長期金利4%、名目成長率3%のシナリオは機械的な気がします。こうなると決めてしまえば、後は機械的に必要な基礎的財政収支の黒字額は計算できますし、改善額も計算できます。しかし、果たして、そのような改善とこのシナリオは整合的でしょうか?

 もし、20兆円の改善が名目成長率を引き下げてしまうようなことがあれば、財政の持続は夢と消えます。

 もう少し、機械的ではない分析を望みます。

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