労働時間

このエントリは本田先生のブログ(http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20060125)のコメント欄での本田先生のご質問にお答えしようとするものです。 まずは、データから。平成15年(2003年)のものです。暦年(1月から12月)で、年度ではありません。
労働時間統計
統計調査名毎月勤労統計賃金構造労働力調査
調査目的雇用・賃金・労働時間賃金就業状態
調査対象毎月6月毎月月末の1週間
回答者企業企業世帯
一般労働者所定内156.5166
一般労働者所定外12.213
一般労働者所定内外168.7(166+13=179)44.2(一般常雇)
パートタイム労働者所定内93.218.7×5.6(=104.7)
パートタイム労働者所定外2.4
パートタイム労働者所定内外95.928.3(臨時)
全労働者所定内142.0
全労働者所定外10.0
全労働者所定内外152.342.2(雇用者)
解説をしますと、3つの統計は各々差があります。毎月勤労統計と賃金構造基本統計は比較的に他調査ですが、労働力調査はかなり違っています。 上の表を見ていただくと、三つを同時に比較できるのは、一般労働者(フルタイム労働者)の所定内、所定外を合計したものだけです。これで、年間労働時間を計算してみます。なお、統計自体では月や月末の労働時間を調べているだけで、年間労働時間自体は調べていません。いろいろな仮定を置いて試算することになります。 まず、毎月勤労統計から。これは毎月調べて、その平均を表示しているので、単純に12倍することにします。 月168.7時間×12月=2,024時間 次に、賃金構造(センサス)です。これは単純に12倍するのは不適当です。というのは調査を行っている6月が平均的な月ではないからです。毎月勤労統計で毎月の労働時間を調べると、通常6月は労働時間が一番長いのです。15年の6月では175.1時間でした。これを利用して賃構造基本統計の労働時間から、年平均を試算します。 月179時間×(168.7÷175.1)=172.5 これから年間労働時間を試算します。 月172.5時間×12月=2,070時間 毎月勤労統計からの試算値とあまり変わりません。 では、労働力調査からの計算です。7日間で44.2時間ですから 週44.2時間÷7日×365日=2,305時間 この差をサービス残業と考えていいのかどうかが問題です。そうだとする前に、四つの問題を検討しておく必要があります。 1 勤め先の範囲  毎月勤労統計は事業所規模5人以上、賃金構造は企業規模10人以上の民間企業対象です。労働力調査では特に制限がありません。 2 労働者の範囲  毎月勤労統計、賃金構造はフルタイムの労働者ですが、労働力調査では一般常雇です。概念は厳密には一致していません。 3 労働時間の捉え方  毎月勤労統計、賃金構造は企業に聞いています。企業は賃金台帳から答えるでしょう。そこで記録されているのは賃金の支払いに対応した労働時間です。サービス残業の時間は含まれていないでしょうし、昼休みもはずれているはずです。労働力調査では家庭に聞いています。誰が回答するかという問題があるのですが、仮に、会社にいた時間と考えて答えると昼休みが入ってくる可能性があります。 4 調査期間  毎月勤労統計、賃金構造は月善愛を聞いています。労働力調査は月末1週間です。月末が忙しいというのはよくあることです。その差が出てきます。 他にも様々な問題があるでしょう。とりあえず、3と4で週2時間、労働力調査が長めに出ていると仮定すると、こうなります。 (週44.2時間-週2時間)÷7日×365日=2,200時間 これらはあくまで様々な仮定を置いたときの試算にすぎません。どのような仮定を置くかで結果は大きく変わってきます。 サービス残業の実態を把握するのはなかなか難しいようです。 統計のソースを示しておきます。 毎月勤労統計 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou1/data15/maikin15-17.xls 賃金構造 一般労働者 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data15/10101.xls パートタイム労働者 http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/kouhyo/data-rou4/data15/31301.xls 労働力調査 http://www.stat.go.jp/data/roudou/2003n/ft/zuhyou/201020.xls 人気blogランキングでは「社会科学」の18位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日も↓是非クリックをお願いします。 人気blogランキング