税収

財政赤字カリキュレーター(http://cloudy9.fc2web.com/mgodz.html)作成中のcloudyさんが、税収の見積もりに苦労されているようです。(http://cloudy9.blog29.fc2.com/blog-entry-18.html)いや、ご苦労が思いやられます。 税収のデータを少しご覧下さい。 この表の名目GDPは1995年基準のものです。単位は兆円。誤差は当初予算額と決算額との差です。 当初予算額も補正予算額も政府が全力を挙げて作っています。これらは政府による税収見積もりです。「では、この見積もりと決算額はあっていたのか?」という、意地悪な冷静な目でこの表をご覧下さい。
一般会計税収の当初予算額、補正後予算額、決算額(億円)
年度名目GDP当初予算補正後予算決算誤差
196532,87730,28730,496-2,381
197069,38472,39572,9583,574
1975173,400134,610137,527-35,873
1980246264,110271,450268,6874,577
1981262322,840318,316289,521-33,319
1982275366,240304,780305,11161,129
1983286323,150319,020323,583433
1984307345,960348,350349,0843,124
1985327385,500381,450381,988-3,512
1986342405,600394,400418,76813,168
1987360411,940430,870467,97956,039
1988387450,900481,060508,26557,365
1989415510,100542,270549,21839,118
1990450580,040591,310601,05921,019
1991472617,720589,900598,204-19,519
1992484625,040576,310544,453-80,587
1993481613,030556,800541,262-71,768
1994491536,650508,160510,300-26,350
1995500537,310506,810519,308-18,002
1996514513,450517,360520,6017,151
1997521578,020562,260539,415-38,605
1998512585,220501,650494,319-90,901
1999508471,190456,780472,3451,155
2000513486,590498,950507,12520,535
2001501507,270496,250479,481-27,789
2002498468,160442,760438,332-29,828
2003502417,860417,860432,82414,964
2004506417,470440,410455,89038,420
2005440,070470,420
2006465,780
当初予算額はそれほど正確ではありません。まあ、これはやむを得ない面があります。「増税、税率引き上げ、増収、支出」で書いたように現在政府が決められるのは、税率や税収ベースの範囲だけで、税収ベース自体は決められません。この見積もりはなかなか難しい。特に、5月の法人税の見積もりは困難です。 ちょっと脇にそれますが、3月決算の企業は5月に法人税を納めます。18年3月決算法人が18年5月に納める税が18年度の歳入なら見積もりは容易です。17年12月に18年度予算を決めるときには、18年3月決算に概ね目処がついているからです。ところが実際は18年5月に納められる法人税は17年度の歳入です。18年度の歳入になるのは19年5月に納められる法人税なのです。つまり、17年12月の段階で19年3月決算の見込みを立てて、18年度の歳入を見積もるという離れ業が要求されるのです。税収見積もりを正確にしようと思えば、ここを変えるのが一番です。実は、昔は、そうだったのです。 では、当初予算作成を作成して1年後にできる補正後の予算額ならあっているかというと、これがそうでもありません。1兆円を超える差はざらです。 当初予算での誤差のワースト記録は、1998年の9兆901億円です。過大見積もりをしたのです。当初予算額に比べて、15.5%も減っているのです。同時に作られた1997年度の補正後予算も3兆8,605億円の過大見積もりとなっています。 この年の見積もり誤りは、かなり問題です。見積もり時点で、1995年度の決算額52兆円も1996年度の決算額、52兆円は分かっていましたし、97年度の税収実績もかなり分かっていたはずです。1996年度に比べて10%以上伸びるという見込みは一体どうしてでてきたのでしょう。1997年4月からの消費税率3%から5%への引き上げ、1998年度の緊縮財政(公共事業の削減)にも関わらず経済は順調に拡大し、消費税の増加と相まって是異種が大幅に伸びると考えたのでしょう。結果は明白で、1997年度には54兆円あった税収が1998年度には49兆円まで落ち込みます。 今年度も緊縮予算です。財政再建に一歩踏み出したとしてマスコミの受けは良いようです。 財政再建で重要なのは予算額ではなく決算額です。 なお決算額を見る限り、大幅な制度改正などの特殊要因がなければ、名目GDPが増えると税収が増えるのは明らかです。名目GDPを着実に増やすことが大事なのです。 そんなわけで、cloudyさん、見積もりがうまくいかないのは、cloudyさんが悪い訳ではありません。政府すら正確には見積もれないのですから。 人気blogランキングでは「社会科学」の22位でした。クリックしていただいた方、本当にありがとうございました。今日も↓是非クリックをお願いします。 人気blogランキング