雇用保護 その2

雇用保護 その1」の続きです。 さて、議論を続ける前に、ここで補足を。 労働基準法最高裁判例で、普通解雇の権利の規制が行われている意味を少し。 まず、ここで規制されているのは、経営上の理由による解雇には限りません。企業の秩序を乱したとか、反社会的行動をとって、企業に迷惑を掛けたとか、仕事の能率が悪いといった理由による解雇については、「合理的」かどうかは比較的客観的に判断でき、正社員であるかどうかが影響することは少ないでしょう。その意味では、あまり大きな問題ではありません。本人に責任や問題があるわけではないが、本人をもはや必要としなくなったから解雇するという場合の問題、つまり整理解雇の場合の問題です。 次に、解雇されるのは特定の個人です。例えば、製品の売れ行きが落ちて、工場で働いている10人のうち1人を解雇する必要があるとします。誰かを解雇する事が必要なのですが、解雇されるのは特定の人間です(工場や、企業の社員全員を解雇する場合も特定されているという点では同じです)。 三番目ですが、最高裁判例これは民事上の争いについての判決です。解雇された労働者が、納得すれば、あるいは納得はできなくとも裁判に訴えなければ、裁判は行われず、判決も出ません。(裁判にもお金、時間、手間、評判といった費用がかかりますから、貧しい労働者はこのような判例があっても保護されないと言うことです。企業相手に訴訟を起こす労働者に裁判費用を貸す金融機関はほとんどないでしょう。また、あまりに賃金が安く、裁判する価値がないとか、すぐに別な口が見つかるので裁判するより、転職した方がいいという場合もあるでしょう。) 最低賃金法のような罰則付きの法律の場合は、話が違います。最低賃金が1時間当たり650円と決まっていれば、当事者が時間給550円と決めても、労働者が行政機関に訴えれば国が650円支払わない企業に払うよう指導し、随わなければ裁判に訴え、刑罰を課します。この場合、裁判をするのは行政機関であって、費用も行政機関が払います。労働者の負担はあまりありません。労働者の保護という点では、こちらの方が有効でしょう。 では、労働基準法第18条の2のような罰則のない法律の場合はどうなるのでしょうか?よく分かりません。 四番目ですが、最高裁の判決のどこにも「正規労働者」、「非正規労働者」などという言葉は出てきません。この判例の対象は全ての労働者です。 非正規労働者であっても、一人一人検討して、その解雇が「不合理」で、「社会通念上」是認できない場合には、解雇無効になるのです。 この点、少し誤解があるように思います。  本当に問題なのは、正規社員、非正規社員であることが「合理性」の判断や「社会通念」の考えにどのように反映されるかです。 つづく。 (12月11日追記 一部修正しました。) (12月13日追記、労働基準法について追加しました。太字になっています。) 人気blogランキングでは「社会科学」の39位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。↓クリックをお願いします。 人気blogランキング