雇用保護 その1

もじれる先生へのアマチュアの異見」で、雇用保護法制について触れたので、ついでに。

雇用保護法制を弱めることが、格差是正の手段として提唱されているのですが、では現実の法制、特に解雇の規制はどうなっているのか?気になったので調べてみました。最新時点の情報までは含んでいません。

まず、基本法である民法。基本的には2週間の予告をすればいつでも労働者を解雇できます。これが基本です。

ただ、例外が五つあります。

1 業務上災害によって療養のため休業する期間とその後30日間は解雇できません。

2 労働基準法によって産前産後の女性が休業する期間とその後の30日間は解雇できない。

3 差別的な解雇はできません。

4 労働組合を結成したり、加入したり、組合活動をしたことを理由とする解雇はできません。

5 有期契約、つまり1年とか6ヶ月とかある期間を決めて雇ったときは、途中で解雇することはできません。

では、これらの例外に当たらない解雇なら民法に規定に従って解雇できるのか?

そうではないのです。解雇する権利の乱用は認められません。

最高裁で昭和50年に「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の乱用として無効になる。」という判決を出しました。さらに、昭和52年に「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の乱用として無効になる。」という判決を出しました。

そして、この判例を立法化して、平成15年に労働基準法が改正され、第18条の2が追加されました。

第18条の2 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効となる。

条文はこちらです。http://www.houko.com/00/01/S22/049.HTM#s2

さて、これを前提に考えると、「格差是正のための解雇規制の撤廃とか緩和」という事が何を意味するのか?

まさか、例外規定の撤廃ではないでしょう。すると、労働基準法の改正と最高裁判例の変更と言うことになります。基準法の改正は国会で行えばいいのですが、どうやって判例を変更するかという問題を脇に置いておくと、徹底的にやればこういうことになります。

「使用者の解雇権の行使は、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができなくとも有効である。普通解雇事由がある場合においては、使用者は常に解雇しうるのであって、当該具体的な事情のもとにおいて、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができなくとも、当該解雇の意思表示は、解雇権の行使として有効である。」

どうでしょうか?ここまで行くと極端論として、受け入れがたいのではないでしょうか?

ではどうすればいいのか?

(つづく)

(12月13日 追記 最新の情報を追加しました。太字になっている部分です。)

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