さて、税はどの程度の支出をカバーしているのでしょうか。少し調べてみました。
一般政府の支出と収入(単位:兆円)項目 | 1980年度 | 1990年度 | 2000年度 | 2003年度 |
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1 財産に対する支払いの内利子 | 7.8 | 16.2 | 16.7 | 13.9 |
2 集合最終消費支出 | 14.7 | 26.0 | 37.0 | 38.6 |
3 個別的非市場財などの移転 | 9.4 | 15.1 | 20.1 | 19.4 |
4 社会扶助給付 | 4.5 | 5.4 | 6.9 | 7.3 |
総固定資本形成 | 14.6 | 21.6 | 26.0 | 21.0 |
支出小計 | 51.1 | 84.3 | 106.7 | 100.1 |
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Ⅰ 生産・輸入品に課される税 | 17.8 | 34.9 | 42.6 | 40.8 |
1 生産物に課される税 | 9.3 | 16.8 | 23.5 | 22.9 |
内付加価値税 | 0.0 | 5.8 | 12.4 | 12.1 |
2 生産に課されるその他の税 | 8.6 | 18.1 | 19.1 | 17.9 |
Ⅲ 所得・富などに課される税 | 27.3 | 60.9 | 46.3 | 36.7 |
内所得に課される税 | 26.4 | 59.0 | 43.8 | 34.3 |
資本移転の内居住者の資本税 | 0.4 | 1.9 | 1.8 | 1.4 |
税 | 45.6 | 97.7 | 90.7 | 78.9 |
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Ⅱ 財産所得の内利子 | 4.6 | 10.8 | 9.2 | 6.7 |
税と利子 | 50.1 | 108.5 | 99.8 | 85.7 |
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税と利子でカバーできない支出 | 0.9 | -24.2 | 6.8 | 14.4 |
一般政府は利子を払わなければなりません。払わなければデフォルトです。一方、利子を受けとってもいます。受け取った利子は利子の支払いに充ててもいいでしょうから、収入としては税のほかに受け取る利子も含めました。
1980年度であれば、この収入で、利子を支払い、最終集合消費、個別的非市場財などを提供し、社会的扶助を行って、さらに固定資本を形成しても、不足は0.9兆円だけでした。。
1990年度では、これらに支出を行った上で24.2兆円の余剰がありました。
200年度には6.8兆円不足し、2003年度には14.4兆円の不足です。
では、「支出をカットしてせめて、1980年度くらいまで回復するようにしたら・・・」と思われる方がおいでかもしれません。例えば、総固定資本形成を14.4兆円削れば、2003年度は均衡するように思えます。しかし、なかなかそれで回復するかというと疑問です。
私が、なぜそう考えるかというとこういうことです。
政府の支出は誰かの収入になっています。総固定資本形成は企業の収入です。社会扶助の支出は社会扶助を受ける人の収入です。詳しくは、「
国の借金と国民の貯金」で書いたことがありますのでお読み下さい。そして収入は所得、富、消費の源泉です。
政府の支出カットは、政府以外の誰かの所得(給料も含みます。)、富、消費を必ず減らします。税は、所得・富、生産物が減れば減ってしまいます。
つまり、「入るを計って、出ずるを制する」と計ったはずの「入る」が減ってしまうのです。
表を見ていただき、1990年度と2003年度を比較すると、「所得に課される税」が24.7兆円も減っているのが分かります。税率引き下げの影響もありますが、所得の減少の効果も大きいのです。
財政の健全化が必要なのであれば、「経済活動を活発にし、それによって税収を増やす。」のが王道でしょう。
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(11月12日追記 計算違いを修正しました。)