基礎年金と国民年金 その5

基礎年金と国民年金 その4」で、交付国債を利用して必要な積立金を一挙に積み立て、消費税を一時的に引き上げてその国債を徐々に償還するという案を説明しました。

そんな複雑な仕組みを作らなくても、同じように消費税を一時的に引き上げて、徐々に積み立てを行えばいいではないか、あるいは消費税で支出を賄えばいいではないかと思われる方もいらっしゃると思います。

そのような方法が不合理であるとは思いません。では、なぜ複雑な方法を提案するのか。簡単にいえば基礎年金制度を維持しないという選択肢を捨てるためです。それによって、政府の決意を堅め、それを国民に周知するのです。

現在、政府に対する信頼は低くなっています。

実は国民年金制度はかなり安定した制度です。いくら保険料を支払わない人がいても、安定している理由は二つありります。まず、給付に必要な経費は保険料を給料からの天引きする事により、強制加入が実効的なものとなっている厚生年金、共済年金から回される仕組みになっています。また、保険料を払わない人には将来給付する必要はありません。将来の支出が減るのです。

このように安定した制度でありながら、国民年金に対する不信があるのは政府に対する不信、制度を維持する政府の意思と能力に対する不信があるからです。

この不信をなくすためには、能力と意思を示すことが不可欠です。

一挙に積み立てを行い、その額が2100年に給付額の10年分ほどあるということであれば、「多少仮定が狂ったとしても、自分の生きている内は給付は保証される」と考えるでしょう。能力はあると判断されます。

国債の償還を止めるということは、政府の支払不能(デフォルト)で、相当な覚悟、つまり市場から資金を調達できなくなってもいいという覚悟がなければできることではありません。基礎年金制度を維持しないという決断は不可能に近いのです。つまり、制度を維持するという意志を持たざるを得ないことになるのです。

これに対して、消費税を財源に徐々に積み立てを行う、あるいは消費税で支出を賄うと、今政府が決めてもそれを将来とも守るという保証はどこにもありません。政府に対する信頼が低下している現在、そのような方法を採ることに決めても、国民がそれを信用するとは思えません。

基礎年金制度に対する信頼を回復するためには、国民の目の前で政府、国が自らの退路を断って見せなければならないのです。そのための仕組みが交付国債を利用して必要な積立金を一挙に積み立て、消費税を一時的に引き上げてその国債を徐々に償還するということなのです。

人気blogランキングでは「社会科学」の27位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日も↓クリックをお願いします。

人気blogランキング