「財政再建・最後の試算」の修正 前編

財政再建・最後の試算」で書いた試算は少し説明不足だったようです。思いがけない誤解を生んでいるようなので少し修正と補足をしておきます。 まず、前提条件を。 (国債の条件) 1 1年目目の最初にある国債残高は500兆円。 2 利子率は常に2.1%とします。後で見るように物価(GDPデフレーター)は2%ずつ上昇していくものとしますので、実質金利は+です。国債を持てば損をするということはありません。 3 1,2の条件から決まりますが、1年目の利払い額は、10.5兆円(表では四捨五入して兆円単位で書いていますので、11兆円になっています。) 4 毎年国債残高の2%を償還します。 (初期条件) 5 1年目の名目GDPは、500兆円。 6 1と5の条件から期首の国債残高を名目GDPで割った値は1.00です。これが一定か、徐々に減っていくことが、財政持続の条件です。 (税収) 7 名目税収は、常に名目GDPの10%であるとします。特段増税をしているわけではありません。普通の場合名目GDPがある一定割合で増えると、税収はそれ以上の率で増えますが、ここでは政治家に甘い前提をおいています。1年目は50兆円です。 (財政支出) 8 政治家の圧力を考慮して、税収はすべて使われるとします。さらに、1年目は税収をすべて使った上でさらに国債を発行して、16兆円の赤字を出すとします。1年目の利払費以外の財政支出は50兆円+16兆円で66兆円です。 9 毎年赤字がでていても、政治家は、税収でまかなえない支出を3%づつ増やしていくものとします。後で見るように物価(GDPデフレーター)は2%ずつ上昇していくものとしますので、税収でまかなえない支出は、実質で見ても1%ずつ増えていきます。このほかに利払い費を賄うための国債発行が必要ですから、国債残高は増えていきます。 10 国債を償還するための財源は国債発行で賄うものとします。従って、償還は国債残高に影響を与えません。しかし、形式的には財政支出は増えます。 (リフレーション) 11 名目GDPは毎年4%ずつ増えていくものとします。 12 物価(GDPデフレーター)は2%ずつ上昇していくものとします。 13 11と12から分かるように、実質GDPは毎年2%ずつ増えていきます。 以上の条件で、各々の指標がどうなるかを見ていきます。少し指標が多くて恐縮ですが、我慢をお願いします。 まず、名目GDPと実質GDPです。
GDP(兆円)
名目GDP実質GDP
1年500500
2年520510
3年541520
4年562530
5年585540
6年608551
7年633562
8年658573
9年684584
10年712595
20年1,053723
次に財政支出です。利払費、償還費以外の支出、普通の支出、つまり、国民へのサービス提供に当てることのできる額はこうなります。
支出(兆円)
税収で賄われる支出財政赤字利払費・償還費以外の支出同実質額
1年50166666
2年5216.568.567.1
3年54.117.071.168.3
4年56.217.573.769.5
5年58.518.076.570.7
6年60.818.579.471.9
7年63.319.182.473.1
8年65.819.785.574.4
9年68.420.388.775.7
10年71.220.992.077.0
20年105.328.1133.491.6
実質で見ても、増加を続けていることに注意してください。国民へのサービスの水準は落ちていません。 次に、普通の支出、利払費、償還費、そして3者の合計です。これは次回にします。 人気blogランキングでは「社会科学」の18位でした。クリックしていただいた方、ありがとうございました。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング