「
外国への投資?その1」について
では、どうしたらいいか。実はあまりいい方法はありません。
一つの手本は一時期のイギリスです。イギリスは「世界の工場」と呼ばれていました。その後、貿易収支は赤字、その赤字をサービス収支、投資収益で補うという構造に移行しました。
日本の場合、国全体として、なお貿易収支が黒字ですが、いくつかの国に対しては赤字です。これらの国に投資を行い、投資収益で赤字を相殺するのは可能です。候補は次のような国です。単位は億円で、日本から見た赤字額を示しています。日本の投資超過は、日本からの投資が相手国からの投資をどれだけ上回っているかと考えて下さい。単位は億円です。
実は既に、このようなパターンができている国もあります。
国別相手国から見た国際収支 その1国名 | 貿易収支 | 貿易・サービス収支 | ネットの投資収益 | 経常収支 | 日本の投資超過 |
スウェーデン | 164 | 421 | -669 | -242 | -1,223 |
イタリア | 54 | 1,783 | -2,600 | -803 | 90 |
カナダ | 356 | -527 | -1,640 | -2,113 | -2,360 |
これらの国では、貿易収支では日本が赤字(つまり相手国が黒字)です。
スウェーデンとイタリアでは貿易・サービス収支でも日本が赤字です。それを投資収益で補って経常収支では日本が黒字になっています。このような構造では、あまり
貿易摩擦は起こりません。
なお、
スウェーデンとカナダは日本に積極的に投資しており、投資収益は均衡に近づくかもしれません。
次の表のような国が日本が貿易収支でも経常収支でも赤字を出している国です。
国別相手国から見た国際収支 その2国名 | 貿易収支 | 貿易・サービス収支 | ネットの投資収益 | 経常収支 | 日本の投資 超過 |
サウジアラビア | 14,781 | 15,028 | 42 | 15,103 | -1,109 |
アラブ首長国連邦 | 13,882 | 13,518 | -320 | 13,419 | 257 |
イラン | 7,185 | 7,193 | 2 | 7,230 | 362 |
インドネシア | 9,103 | 9,003 | -2,922 | 6,681 | -1,361 |
オーストラリア | 7,086 | 9,131 | -3,377 | 5,804 | 5,061 |
スイス | 2,296 | 3,367 | 92 | 3,482 | -10,656 |
マレイシア | 1,026 | 3,704 | -495 | 3,218 | -775 |
ロシア | 2,442 | 2,640 | -151 | 2,531 | 225 |
南アフリカ | 1,504 | 1,646 | -193 | 1,467 | -503 |
ブラジル | 1,158 | 845 | -601 | 273 | -629 |
ニュージーランド | 3 | 409 | -240 | 178 | 807 |
多くの国で、日本は投資収益で黒字を出しています。しかし、その規模は貿易・サービス収支の赤字を解消するほどではありません。そこで、投資を行って投資収益を拡大する余地が、理論的にはあります。
しかし、実際に相手国が日本に投資する以上に日本が相手国に投資できるかというと問題がありそうです。
1位の
サウジアラビアと2位の
アラブ首長国連邦は、
原油の値上がりで潤っており、借金をしそうにありません。人口が少ないので、企業進出も難しそうです。
3位のイランへの投資は経済的には有望だと思うのですが、何せ、アメリカとの関係で投資は困難です。
4位の
インドネシアと7位のマレイシアは、いろいろな経済上の問題がありますが、投資可能でしょう。
5位のオーストラリア、9位
南アフリカと11位の
ニュージーランドは、投資可能でしょう。ただし、相手が投資を拡大してくる可能性があります。
6位、スイスは投資可能でしょう。
8位のロシア、10位のブラジルは最近評価の高いBRICで、投資は増えるでしょう。
ある程度はこれらの国に投資するということは可能なようです。
問題は、「誰が」投資するのかです。
国は無理でしょう。日本がアメリカ以外の国に外貨準備を移し始めたとなると何が起こるか分かりません。
企業でしょうか。企業体質も改善してきたことですし、BRICやこの表に載っている国への直接投資に打って出る企業はあるかもしれません。
個人は、最近低
金利に耐えかねて外
国債への投資を始めているようです。あるいは、かなりの投資がされるかもしれません。
南アフリカ、オーストラリア、
ニュージーランドなどは人気が高いようです。ただし、国際機関の発行するものが多いようなので、どの程度の規模になるかは分かりません。
個人や企業にとって望ましい行動と、国全体にとって望ましい行動が一致するとは限らないのです。
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