外国への投資?その1

今朝の日本経済新聞の「景気指標」の欄に「米の対日赤字、警戒水域に」という記事がありました。国際収支は国全体で見ればいいので、特定の国との関係を見ても意味がないというのは正論なのですが、そうも行かないのが現実です。この記事では貿易収支に焦点を当てています。アメリカとの経済関係は貿易だけではありません。

幸い、財務省から地域別国際収支が発表されています。http://www.mof.go.jp/bop/c16all1.htm

平成16年のアメリカとの関係を包括的に見てみましょう。

まず問題の貿易です。日本の輸出が13兆966億円、輸入が5兆8,556億円。輸入は輸出の半分もありません。貿易収支は、日本から見て7兆2,410億円の黒字です。中国のおかげで目立たなくなったとはいえ、巨額です。アメリカがいらだつおそれがないわけではありません。

最初にも書きましたが、アメリカとの関係は、貿易だけではありません。輸送や旅行といったサービスの提供に伴う支払いや受け取りがあります。サービス収支と呼ばれているものです。

日本がサービスを提供して受け取ったのが、3兆1,042億円、アメリカから提供を受け支払ったのが、4兆1,909億円。差し引きすると、日本の1兆867億円の赤字です。

この赤字の中心は旅行に伴うもので、旅行収支を見ると、8,799億円の赤字です。ハワイに行ったり、ニューヨークへ行ったりする方が、東京や、京都に来るより多いわけです。

貿易とサービスを合わせると、日本の黒字は6兆1,544億円に減ります。それでも巨額に違いはありません。

さて、未だ金のやりとりはあります。所得収支と呼ばれるものです。日本人がアメリカで働いて稼ぐ、アメリカ人が日本で働いて稼ぐことに伴うのが雇用者所得です。人が働いて稼いだお金です。これは実はあまり大きくはありません。日本が11億円の黒字です。大きいのは投資収益です。これまで、株や証券や貸し付けで相手側に投資したものに対する配当や利子が中心です。こちらはお金が働いて稼いだお金といえます。これは日本から見て3兆6,739億円の黒字です。

所得収支全体では、日本が8,168億円支払い、アメリカから4兆4,918億円受取り、差し引き、4兆1,018億円の黒字です。サービスで吐き出したものの4倍ぐらい取り返している訳です。

まあ、これだけ所得収支の黒字があれば、それだけで円高になっているはずで、それを乗り越えて貿易黒字を出している日本企業の強さには、頭が下がります。

貿易、サービス、所得、三つをあわせると10兆2,562億円の黒字です。このほかに雑多なものがあり、経常収支は日本の9兆6,915億円の黒字です。

生み出された黒字はどこへ行ったか。一部はアメリカに投資されています。3兆470億円の投資超過です。中心は証券投資で、2兆2,904億円です。これがなければ、大幅な円高になっていたでしょう。

しかし、問題があります。この投資は、(賢明なものであればという条件付きですが)、平成17年以降投資収益となって日本に戻ってくるわけです。3%としてざっと700億円です。

アメリカとの経常取引による黒字→アメリカへの投資→投資収益増加→アメリカとの経常取引による黒字増加という蟻地獄のような妙な循環が生じてしまっているのです。

いつかは、アメリカとの摩擦が再燃する虞があります。

では、どうしたらよいか?

(続く)

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