家庭内分業さんへのお答え

ニート その3」に、「家庭内分業」さんからコメントをいただきました。お答えが長くなるので、記事にします。(コメントは「ニート その3」でご覧下さい。)

まず、私は、夫婦が家庭内で役割分担をすることについては、何の問題もないと考えています。基本的に、夫婦のあり方は、夫婦でお決めになればいいことで、他人が口を出す必要はないと思っているからです。また、一般的に言えば、分業というのは仕事を効率化する面があります。現在の社会は高度な分業によって、効率的な生産を行っています。それによって我々は高い生活水準を享受しています。家庭内の分業も同じ効果を持っています。分業自体を悪とする理由は思いつきません。

妻が家事、育児をして、夫の収入に貢献していても、妻名義の収入がなければ、NEETだと扱うのはおかしいというご主張はその通りだと思います。

報告書では配偶者がいれば、自動的に「若年無業者」ではないとしています。したがって、「家庭内分業」さんの挙げられた例の「妻」は「無業者」には入りません。NEETにも入らないでしょう。

「しかし、配偶者がいても『無業者』というべき人はいるだろう。」というのが私の主張です。

ただ、私の書き方分かりにくかったのかもしれませんが、私は専業主婦をすべて「無業者」として扱えと主張しているのではありません。問題がない専業主婦は「無業者」に含める必要はありません。その意味で、問題がなさそうな「一定以上の所得を得ている配偶者を持ち、就職を希望していないものだけを」無業者から除くことが適切だと考えているのです。

「家庭内分業」さんの挙げられた例では、「妻」は家事・育児に専念しているわけですから、「就職を希望していない」ことになります。したがって、「夫」の所得が低くなければ、私の出した改良案でも「無業者」ではない、NEETでもないことになります。

では、夫の所得が低いとき、なぜ、「無業者」に含めるのかと言えば、それは生計(所得)の面で問題があり、対策が必要である可能性があるからです。例えば、夫婦で年収が100万円、となれば何か支援が必要な可能性が高いでしょう。「支援などいらない。我々はこれでやっていくのだ。」という方ももちろんいらっしゃるでしょうから、あくまで可能性の問題です。

以上が、私のお答えです。あるいは私がコメントの趣旨を誤解しているかもしれません。何せ、コメント欄には字数制限がありますので、どうしても短くなります。読みとりにくいこともあるのです。もし読みとり損ねていた節には、ご容赦下さい。

さて、ここからは余談です。「家庭内分業」さんのコメントに触発されて、私の考えがはっきりしたことなので、書いておきます。

このブログに「労働・社会問題」という味も素っ気もない名前を付けています。ある人のグループについて「社会問題」と表現するとき、私は、三つのニュアンスがあるとおもいます。NEETが問題だという例を取るとこうなります。

1 NEETは問題を抱えている人たちであるから、社会の支援が必要だ。

2 社会の構造などが、NEETとういう不幸な人たちを生み出している。だから社会はNEETを助ける責任がある。また、NEETを生み出さないような社会に変えなければならない。

3 NEETという生き方は、社会の害になる。だから社会として対策を講じなければならない。

どのニュアンスをくみ取るかによって、NEETと呼ばれること、あるひとをNEETと呼ぶことに対する抵抗感が変わってくるのでしょう。もちろん、1,2,3どれでもいやだということもありえます。

今回は「無業者」の定義を巡る問題を取り上げたのですが、「無業者」という言葉で対策の必要な人を示そうとしているので、一方で複雑な議論になり、他方で、定義に対する反発も生まれてくるのだと思います。対策の必要な人ということではなく、「無業者」をただ単に「働いていない人全部」と定義するのであれば、こういう問題は起こりません。

政策志向な言葉の定義は、実に難しい。これが私の感想です。

いずれにせよ、「家庭内分業」さん、貴重なコメントありがとうございました。

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