パートタイム労働者が増えなくなったのはなぜ? その4

最後の仮説は、「フルタイム労働者の非正規化」です。

典型的なパートタイム労働者は、次の四つの条件を満たしています。

1 短時間労働

2 基本給は時給

3 雇用期間に定めがある契約(実際には更新されることが多い大いにしても、です。)

4 それほどの熟練を要さない定型的な仕事

パートタイム労働者に集中した調査として「パートタイム労働者総合実態調査」があります。ご関心があれば、次のリンクでご覧下さい。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/01/index.html

さて、これに対して、典型的正社員を考えると次のようになるでしょう。

1 通常の労働時間

2 基本給は月給(中小企業の場合日給月給の場合もかなりありますが。)

3 雇用期間に定めがない。(多くの場合、定年はありますが。)

4 熟練を要し、判断も求められる仕事(若い内は育成期間ということで、こうではないことが多いですが)

さて、労働者はこの2種類に限られてはいません。

典型的パートタイム労働者の4条件の1、「短時間労働」を「通常の労働時間」に代えた労働者がいることは以前から知られています。いわゆる「フルタイムパート」です。

先の「パートタイム労働者総合実態調査」で調べられており、平成13年で本当のパートタイム労働者950万人に対し、170万人いました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/01/jigyo1-1.html

契約社員は、典型的正社員の条件の3、「雇用期間に定めがない」を「雇用期間の定めがある」に代えたものと考えられます。

今、挙げた条件4つだけで労働者の類型を区分するだけで2の4乗、16類型が考えられます。このほかに派遣労働者という類型もあります。

16類型のうち8類型がフルタイム労働者、つまり一般労働者に該当します。

現在の企業は、典型的正社員を抑制しつつ、他の類型のフルタイム労働者を増やしている。これが、「フルタイム労働者の非正規化」仮説です。

パートタイム労働者を活用する理由は次のようになっています。

一番多いのは「人件費が割安」で、65.3%。

二位が「1日の忙しい時間帯に対処」で、39.2%。これは、パートでないと仕方がありません。

三位が、「簡単な仕事内容だから」で、31.4%。これならフルタイムでもいいのです。

四位が、「一時的な繁忙に対処するため」で、27.3%。これはむしろ、有期契約のフルタイム労働者に向いています。

五位、「人を集めやすいから」の17.8%。フルタイム労働者が集めやすくなれば、フルタイムでもいはずです。

六位は、「業務が増加したから」で、17.1%。フルタイムでも問題はないはずです。

七位。「雇用調整が容易」、16.4%。有期契約、派遣労働者に向いています。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/01/jigyo3.html

このように、パートタイム労働者を雇用する理由は、典型的な正社員では困るということです。つまり、パートタイム労働者でなくとも典型的ではなければフルタイム労働者でもかまわない、ということです。

そうであれば、典型的ではないフルタイム労働者が増えれば、パートタイム労働者は、そんなには増えないことになります。「フルタイム労働者の非正規化」仮説が成立する可能性はあります。

しかし、これは仮説にとどまっています。裏付けとなるデータがないからです。否定するデータもありません。

一つのデータを示しておきます。

毎月勤労統計では、平成11年の常用労働者の中でフルタイム労働者の割合は、80.5%でした。

http://www2.mhlw.go.jp/kisya/daijin/20000217_02_d/mk11r.html

これが、平成16年には74.7%に低下しました。

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/16/16fr/16c03r.html

一方事業所・企業統計調査では、平成11年には正社員・正職員は3,148万人で、常用雇用者に占める割合は71.5%でした。

これが16年には、2,796万人、66.2%に低下しています。(臨時労働者を除いた者を分母にして計算しました。臨時労働者まで含めた全体に対しては62.5%です。図5を見てください。)

http://www.stat.go.jp/data/jigyou/2004/sokuhou/youyaku/youyaku.htm

二つの調査の差は、フルタイムである非正社員です。フルタイム労働者のうち、正社員・正職員の割合は特に変化をしていないようです。この結果からは、この仮説を支持できません。

同時に否定もできません。なぜかというと、事業所・企業統計調査の「正社員・正職員」のうち、「典型的正社員」の割合が減っているかどうかが分からないからです。減っていれば、この仮説が正しいということになります。

これを確認できる統計はないようです。

基本的には、パートタイム労働者の増え方が鈍ってから、未だそれほど時間が経ていないので、データも最近のものを使わなければなりませんが、未だできていないのです。

そこで、この仮説は将に「仮説」です。

結局、今のところある程度データの裏付けあるのが、「反動」、「飽和」の二つ、データの裏付けはない(否定的なデータもない)が理論的にあり得るのが、「フルタイム労働者の非正規化」ということになります。

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