これからの若者は仕事を見つけられるか? その4

昨日の続きです。

昨日の「1997年からの長期不況」という表現に違和感を覚える方がいらっしゃるかもしれません。バブル崩壊後ずっと不況が続いているという印象が強いからです。

しかし、実際にはそうではありません。

戦後の日本では13回の景気循環があり、現在は14回目の循環に入っているとされています。

内閣府の経済社会総合研究所が公式見解を出しています。http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/041112hiduke.html

いわゆるバブル景気は、第11循環です。1986年の11月を底として1991年2月まで32ヶ月間にわたり拡張が続きました。そしてバブル崩壊後83ヶ月(約7年です)もの間後退を続けました。

しかし、1993年10月を底としてこの長期後退も終わりを告げ、1997年5月まで拡張が続きます。第12循環の拡張局面です。そして、この景気好転を見て、1997年4月からの消費税の引き上げなど財政再建のための措置が大々的に実施されます。(その意志決定は1996年に行われました。)結果は、容易に予測できるとおりで、景気は後退に転じます。このときの景気後退は20ヶ月(約1年半)続きます。

景気がようやく底を打ったのは、1999年1月でした。

本当の意味で日本経済が変質したのは、1997年以降のことです。

さて、1997年には現在の30から34歳は22歳から27歳、25歳から29歳は17歳から21歳でした。彼らは職業生活の最初の時期、あるいは職業生活に入る前に長期不況、日本経済の変質に遭遇したわけです。

1997年に財政再建という名の早すぎる引き締めを行わなければ、彼らの運命は変わっていたでしょう。

思えば、団塊ジュニアの若手が大量に労働市場に登場しつつある時期は経済をやや拡張気味に持っていっても、ホームメイドインフレにはなりにくい時期でした。また、彼らの後には、もう人口の山がないことも明らかでしたから、彼らが十分な職業経験を積み、能力を身につけられるよう配慮すべき時期でもありました。

「失われた10年」という表現がありますが、これはバブル崩壊後より、むしろ1997年以降に当てはまるでしょう。今は2005年ですから、「10年」には少し欠けますが。

したがって、現在の彼らの状態を「自己責任だ。」とは言えない。私はこう考えています。

このような、歴史から得られる教訓は何でしょうか。

一番大事なのは、労働市場は、需要の不足があれば賃金が下落して完全雇用を達成するような単純な市場ではないということです。

そして、それならば、人口変動にともなう供給の変化にあわせて、需要の方を管理する必要があるだろうということです。

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