育児保険 その4

この育児保険シリーズに、労務屋@保守おやじさんから丁寧なコメントを、Inoueさんからすばらしいアイディアの盛り込まれたTBをいただきました。お礼を申し上げます。

お二人のコメント、TBを読んで、一つ重要なことを書き忘れていたことが分かりましたので、それを補足します。お二人には、別にきちんと返事を差し上げようと考えています。

書き忘れていたことというのは、坂東さんご提案の育児保険の導入は少子化対策としてはほとんど効果がないだろう、ということです。

私は子育て支援は必要だと考えていますが、それは子育て家庭の経済的負担が大きく、子を持たない家庭とのバランスが崩れているのを是正する必要があるからです。

もう一つの理由は、将来年金を受け取るのであれば、その時、年金の費用負担をしてくれる子供たちを育てる負担を特定の家庭だけに押しつけるのはおかしいと思うからです。

この点については

http://takamasa.at.webry.info/200501/article_6.html

http://takamasa.at.webry.info/200502/article_6.html

を、ご覧ください。

では、なぜ、少子化対策としては効果がないと考えるか。次のような連鎖を考えています。

1 このように保育サービス供給を増やせば、フルタイム雇用の女性の出産を理由とする退職が減る。

2 フルタイム女性の退職が減れば、企業は新たにフルタイムで採用する若者、男女を問いません、を減らす。

3 フルタイムでの若者の新規採用が減れば、彼らは不安定就労者になる。

4 不安定就労者は、結婚もしにくく、保育サービスがあったとしても、それ以前に生活の不安があるから子供を作らない。

フルタイムの女性が子供を産むようになる効果があったとしても、若年の不安定就労層の増加により、その効果はキャンセルされてしまうと思います。

専業主婦についていえば、扶養控除を減らされ、保険料を取られ可処分所得が減るわけですから、子供を増やそうという誘因にはならないでしょう。保育相談があるから、育児サークルがあるから子供を産もうとする人がそんなにいるのでしょうか。

以上が、この育児保険制度が少子化対策としては有効ではない考える理由です。

なお、私は財を財源とする現金給付を主張していますが、相当高額にしない限り、これにも少子化対策としての効果は、それほど大きくはないだろうと思っています。

余談になりますが、自分が結婚し、子供を作るというライフコースにあわせて自分自身か配偶者の賃金が上昇すると期待できる人は(ある程度生計費保証的な賃金体系の雇用についているわけです。)であればとゼロか少額の児童手当でも、子供を作るでしょう。子化化は防げます。

また、自分の雇用は不安定で、年齢の上昇とともに賃金が上昇することはないと思っている人でも、高額の児童手当が期待できれば子供を作れるでしょう。やはり少子化は防げるでしょう。

今の日本では、「自分の(配偶者の)雇用は不安定で、年齢の上昇とともに賃金が上昇することはないだろうし、児童手当がもらえるにしても雀の涙ぐらいだろう。」と思っている人が増えつつあるのです。このような予想が広がっていく以上、少子化をくい止めるのは難しいでしょう。

「自分や配偶者の雇用はそれほど安定しているとは言えず、賃金が年齢とともに上昇するとしても、それはせいぜい30代前半ぐらいまで」と思っている人が、子供を作る気になるような制度、少子化をくい止めたいなら、これを用意しなければなりません。

よろしければ、

http://takamasa.at.webry.info/200501/article_8.html

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