育児保険 その3

坂東さんは「保険という形をとるメリットの第一は、すべての親が利用できるユニバーサルサービスを可能にすることにある。税財源ではどうしても所得や必要度による制限が避けられず」とされています。

しかし、そのような制限を加えるかどうかは、ものの考え方次第、政治的な意志決定の話で、別段他の制度と同様に制限を加えなければならないことはありません。現金給付であれば、一律に給付し、所得税で調整すればいいのです。

税財源の問題として、「専業主婦の不公平感」も指摘されています。

しかし、保険でサービスを給付する事にすれば、不公平感はなくなるのでしょうか。実際に制度を運営すれば、専業主婦のサービス利用度が、働いている母親より低くなるのは当然です。坂東さんの提案は、端的に言えば成人国民全員に対する人頭税です。専業主婦から不公平だという声が挙がるのは当然予想されます。まして、扶養控除を減らしたり、現行の児童手当を廃止すれば不公平感はさらに高まります。子供の数に応じた現金給付の方が、遙かに公平感は高いでしょう。

保険という制度の第二のメリットとして、「多様な主体が参入できること」を挙げられています。なぜ、税を財源とすると多様な主体が参加できないのか、理由が分かりません。保険でサービスを給付するのであれば、病院のように審査が必要になります。税財源でサービスを提供する場合でもこの点は同じです。もっとも多様な主体が参加しやすいのは現金給付です。市場で自由に競争すればいいのですから。何の制限もありません。

第三のメリットとして「世代間の連帯の確認」を挙げられています。みんなが払う税財源で子育てのためのサービスを給付したり、児童手当の形で現金を給付したりすると、子育て世代の対する連帯の表明にはならないのでしょうか。そんな理由はないように思います。

坂東さんは、「公費で公務員が行うより、より多様で創意に満ちたサービスが保険では可能である」と主張されていますが、そのようなサービスを保険の給付として認めるかどうかは公務員が決めるのですから、限界があります。

坂東さんは「新たな制度の創設というと、大きな政府につながる」という批判が巻きあがるとされています。社会保険制度、特に現物給付をする制度は、前回書いたように、その管理のために大きなコスト、人員を必要とします。また、何を給付として認めるかに政府の大きな裁量が働きます。この批判は正当な批判なのです。税財源による現金給付がもっとも小さな政府で済む制度です。

最後に、私は社会で子育て支援をする必要が大いにあると考えています。2005年の1月、2月に児童手当についての記事をたくさん書いていますので、お読みいただけると嬉しいです。

なお、この記事は労務屋@保守おやじさんの記事に触発されて書いたものです。こちらもご覧ください。

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20050407

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