焦土戦術?それとも焼き畑?

フジテレビがニッポン放送の退職者受け入れを検討しているそうです。新型の焦土戦術です。

企業の本質とは何かを考えさせる戦術です。規制の意味も。

普通焦土戦術というと、企業の魅力のある資産を売り払ってしまって、買収の意味を失わせるのですが、今回は人を抜き取ってしまおうということのようです。

合理的な戦術かもしれません。今、優良資産を売り払うと、ニッポン放送の取締役が株主から責任追求されるおそれが多分にあります。「万一負けたら・・・」、サラリーマン重役としては、考えざるを得ないでしょう。

この戦術なら取締役は責任を負わないで済みます。社員が自分で辞めていくのを無理に止めることはできませんから、取締役に責任はありません。

リスクはすべて辞める労働者が負うことになります。労働者も一応は生活が保障されます。ストだと給料をもらえませんが、転職すれば給料は確保できます。

では、この戦術は効果があるのでしょうか?

もし、社員全員が辞めてしまえば、放送を続けることは不可能。広告収入はゼロ。逆に契約違反で賠償をしなければならない。企業価値はゼロかマイナス。こういう筋書き通りに進むでしょうか?

まず、社員の全員が辞めるか?

辞めたら放送は本当に不可能か?

辞めたら社員はどうなるか。

産経新聞やフジテレビに雇ってもらえるでしょうが、産経新聞やフジテレビは、ラジオ放送はできません。ラジオ放送の設備を用意することはできるでしょう。しかし、免許がありません。「新ニッポン放送」を作って免許を取得して、となると大変です。そもそも電波は余っていないのではないでしょうか。

すると、転職した社員は何をするのでしょう。新聞社やテレビ局と共通の職種の社員はいいでしょうが、ラジオ固有の職種の社員はどうするのでしょう?職種転換するのでしょうか。これまでのキャリアを捨てて。彼らはそれでも辞められるでしょうか。

ひょっとすると、ラジオにしかない職種の労働者はほとんどが下請けやフリーランスかもしれません。もしそうなら、転職先で仕事は一応あるわけですから、社員が全員辞めるという筋書きは成立する可能性はあります。(「一応」というのは余剰人員と見なされる可能性が高いからです。受け入れた会社では、多分、派遣や、パートが首を切られることになるでしょう。)

でも、その場合、社員がいなくとも放送を続けられるんじゃないでしょうか。

下請けやフリーランスの労働者の面倒まではフジ、サンケイは面倒を見られないでしょう。コストが高すぎます。そもそも面倒を見たくないから、下請けやフリーランスを使っていたのでしょうし。下請けやフリーランスの労働者から見れば、株主がどうであれ、生活のためにはニッポン放送との契約は失いたくない、失うわけには行かないはずです。

すると、ライブドアには一般的な職種の社員を新規採用で確保し(これは、現在の労働市場の状況から見て不可能ではないでしょう。)、下請けやフリーランスを使って放送を続けるという対応が可能なのかもしれません。体制が整うまでは、とりあえず一日中ベートーベンの交響曲を流しておいてもいいのですから。AM放送での音楽では、あまり聴く人はいないでしょうけれど。でも、運命の出だしなど、なかなか趣があるんじゃないでしょうか。

社員が自分から辞めていけば、自己都合の退職金しか払わなくて済みます。給料の高い中高年も一挙に整理できます。万々歳ではないでしょうか。

焦土戦術をとったつもりが、後からくる者のために焼き畑を作ってあげたことになってしまうかもしれません。

現在の社員でなければラジオ放送を続けられないのかどうか。これが分かれ目です。

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