「意欲のない若者」増加
29日の日本経済新聞の見出しが「『意欲のない若者』増加」です。2004年平均の労働力調査が発表されたのを受けての記事です。
文中には、「特に目立つのが若年層の男性の『労働離れ』だ。」とあります。15歳から24歳の労働力率が低下したのを根拠に、こう書いているのですが、を指してと呼んでいるのですが、高校在学年齢まで含めて「若年層の男性」と呼ぶのは少し抵抗があります。それに、15から19歳ぐらいまでと20歳以上では労働力率に大きな差があります。15から24歳の中で年齢構成が変われば、このそう全体の労働力率は変わるので、意欲が変わったのか、年齢構成が変わったのか、これだけでは判断できません。
そこで20歳から24歳の男性に限定して、労働力率と完全失業率を調べてみました。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/zuhyou/054bh08.xls
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/zuhyou/054bh11.xls
平成 6年 74.9% 5.0%
平成 7年 74.0% 5.5%
平成 8年 74.6% 6.1%
平成 9年 75.0% 6.2%
平成10年 74.2% 7.3%
平成11年 72.8% 9.3%
平成12年 72.7% 9.6%
平成13年 71.9% 9.8%
平成14年 71.4% 10.5%
平成15年 70.8% 11.2%
平成16年 68.5% 10.3%
確かに、年齢を限っても労働力率は低下しています。70%を切ったのは戦後初めてでしょう。(こちらの方が見出しとしては、具体的で迫力があったのではないかと思います。)しかし、だから意欲がないと決めつけていいのでしょうか。
注意したいのは、完全失業率と平行して労働力率が低下していることです。意欲がないというよりも、努力して仕事を探してみても、それなりの仕事が見つからないという、現実の壁にぶつかって、仕事探しをやめた、という方が実態ではないでしょうか。
労働経済学では求職意欲喪失者といいますが、これは訳語で、元の言葉は「勇気を奪われた、志気を落とされた者」といったもので、自分で勝手に意欲を失ったというよりも、他人に意欲を砕かれたというニュアンスです。元の言葉の方が日本での実態をよく表しているように思われます。
この世代は1980年から1984年の間に生まれています。物心ついて以来不況が続いているわけで、若いときに景気のいい時期を経験した大人とは違います。不況で仕事がないだけではなく、年金破綻だ、親の介護が大変だ、子育ても難しいなどと聞かされ続けているのですから、小娘さんが若者の厭世観と表現されているもの(http://www.doblog.com/weblog/TrackBackServlet/952531)を、彼らが持っていてもそう不思議ではありません。
彼らが意欲を持ち続け、仕事を探し続けていれば、彼らの世代の失業率は15%位になっていたはずです。
15人に1人しか失敗しない低いハードルを使って競走をしていたときは、全員参加していたけれど、5人に1人は超えられない高さにハードルを調整したら、何人かは競走に参加する意欲を失ったというのが現状でしょう。「参加を求めるなら、ハードルを下げないと。」ハードルの低いときに協議に参加していた私はそう思います。
意欲がないと決めつけて何になるでしょう。景気をよくして、採用を活発にすれば、彼らも再び「勇気づけられ」た者になり、労働市場で仕事を探し、働き始めるはずです。