恩恵は行き渡らず?

 1月31日の日経新聞に、「上場企業が過去最高益の見通しとなったことの恩恵を受けていますか。」という問いに会社員の82%が「最高益の恩恵を受けていない、どちらかといえば受けていない」と回答したという記事が載っていました。

 2月1日に厚生労働省が「毎月勤労統計」の16年平均の速報を発表しました。速報ですので、今後修正されますし、簡単な結果しかでていないという制約はありますが、日経の記事を検証してみたいと思います。

 http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/16/16p/mk16p.html

 これによると、16年平均の現金給与総額(時間外手当を含んだ額です)は332,485円で、前年に比べて0.7%ですが、減少しています。

 所定内給与を取ると、253,105円で、やはり、0.6%の減少。

 ボーナスなどの特別に支給された給与は、60,454円で、これはやや減少幅が大きく、2.4%の減少です。

 過去最高益で、基本給はともかくボーナスなどをはずんだ会社もあると保守親父さんが主張されています。それに間違いはありません。

 http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20050131 

 では、なぜこうなるのか?

 一つにはフルタイム労働者が減ってパートタイム労働者が増えているからです。同じ統計でフルタイム労働者とパートタイム労働者の数をみると、

  フルタイム(統計では一般労働者)  32、011千人 1.1%減少

  パートタイム労働者           10,819千人 5.5%増加

となり、

パートタイム労働者の比率は25%に上昇しています。

フルタイム労働者とパートタイム労働者では所定内給与に大きな差がありますし、ボーナスではもっと差があります。

そこで、フルタイム労働者で、多少所定内給与が上がっても、ボーナスが増えてもパートタイム労働者の割合が高くなれば、うち消されてしまいます。ボーナスではその打ち消し効果はより大きくなります。

こう考えると、毎月勤労統計の結果は自然なものと読めます。

厚生労働省のHPによると16日に確報がでるそうですので、すぐに恥をかくことになるかもしれませんが、フルタイム、パートタイムどちらも所定内給与は、余り変化がなく、フルタイムの特別給与は率でみてやや増加、パートタイムの特別給与は、率はともかく額でみるとほとんど変化していないのではないでしょうか。

そうすると、少なくとも全体の25%をしめるパートタイム労働者は恩恵を受けていないことになりますし、フルタイムの中でも業績のよくない大企業、中小企業、零細企業に勤めていてそれほど賃金の上がっていない方もあるでしょうから、「82%」にはそれなりの信憑性があると言っていいのではないでしょうか。

もう一つ、賃金は多少増えたが、仕事がきつくなっているのだから恩恵とはいえないと思っている方がいらっしゃるのかもしれません。あるいは、自分は成果を上げたのだから当然だ、成果を上げているのに賃金の増え方が少ないという方もおいでかもしれません。

こういう意味では「恩恵」というやや情緒的な言葉を使ったことが調査の結果に影響しているかもしれません。

ただし、日経の記事では「会社員」の範囲が20歳以上としか分かりません。範囲が正社員などに限定されていれば、また、話は変わってきます。最近は記事の根拠となった調査の概要が、記事に添えられるようになってきて、とてもいいことだと思うのですが、もう少し詳しく書いてもらえると、助かります。

 

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