毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年8月)

毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年7月)」の続きです。 8月の常用雇用は2.2%増加しました。内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が2.1%と15年12月以来初めて2%を超え、パートタイム労働者の増加率は2.6%と前月を少し上回っています。フルタイム労働者の雇用の増加率が高くなり、パートタイム労働者のものが低めという経路に乗っているといえるでしょう。雇用の拡大は大いに結構なことです。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
7月2.00.94.7
8月2.00.94.7
9月2.01.33.9
10月2.21.34.5
11月1.61.14.5
12月2.32.44.4
16年1月2.11.43.6
2月1.91.92.3
3月2.11.92.8
4月2.01.53.3
5月2.01.53.1
6月2.01.62.8
7月2.01.92.4
8月2.22.12.6
9月速報2.22.02.2
総実労働時間は、常用労働者全体では0.8%の減少です。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.3%減っただけですがパートタイム労働者は2.2%も減少しました。パートタイム労働者については、4月以降の傾向が続いているようです。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
7月△0.30.4△1.1
8月0.30.7△0.2
9月△0.9△0.6△1.3
10月△2.7△2.6△1.4
11月0.00.6△1.5
12月△0.20.2△1.0
16年1月△0.9△0.4△0.3
2月0.40.6△0.5
3月0.71.2△0.2
4月△1.5△1.0△2.4
5月△0.8△0.2△2.1
6月△0.30.2△1.7
7月△2.5△2.5△2.4
8月△0.8△0.3△2.2
9月速報0.71.2△1.3
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えますと、1.4%の増加です。フルタイム労働者のものは1.8%増え、パートタイム労働者の労働投入量は0.4%の増加です。 「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年5月)」で、「2月以降(4月を除く)労働者の数からいえばパートタイム労働者の割合は高まっているのに、労働投入では逆にフルタイム労働の割合が高まるという傾向がみられます。労働投入のフルタイム化という傾向が定着するか注目です。」と書きましたが、8月はこの通りになりました。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
7月1.71.33.6
8月2.31.64.5
9月1.10.72.6
10月△0.5△1.33.1
11月2.01.73.0
12月2.11.63.4
16年1月1.21.03.3
2月2.32.51.8
3月2.83.12.6
4月0.50.50.9
5月1.21.31.0
6月1.71.81.1
7月△0.5△0.60.0
8月1.41.80.4
9月速報2.93.20.9
これに対して名目で見た一人当たりの平均賃金の動きです。現金給与総額は、7月は1.2%の増加でしたが、8月は0.1%の増加です。フルタイム労働者は、0.5%増加し、パートタイム労働者は1.7%減少しました。6月、7月のフルタイム労働者の増加は、特別に支払われた給与が3.8%増加した影響が大でしたので、通常ペースに戻ったといえるでしょう。 パートタイムの所定内給与は1.4%の減少ですが、所定内労働時間は2.1%も減少しています。1時間当たりの所定内給与では名目では0.7%、実質では1.2%の上昇です。これで労働投入はあまり増えていないです。これは需要が増え、それとより葉やy少な目に供給が減ったときに生じる現象です。パートタイム労働市場はタイトです。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
7月0.9(0.5)1.3(1.0)0.7(0.4)
8月0.4(0.2)0.7(0.4)1.7(1.4)
9月0.4(0.3)0.6(0.5)0.4(0.3)
10月0.7(0.4)1.1(0.8)0.1(△0.2)
11月0.1(0.3)0.7(0.3)△1.1(△1.5)
12月0.0(△0.2)0.4(0.2)0.5(0.3)
16年1月0.0(0.0)0.5(0.5)△0.3(△0.3)
2月0.7(0.3)1.0(0.6)0.8(△0.4)
3月1.5(1.5)0.81.5
4月0.0(0.3)0.5△0.8
5月△0.1(0.4)0.20.0
6月1.4(1.9)1.80.2
7月1.2(1.6)1.6△0.8
8月0.1(0.6)0.5△1.7
9月速報0.20.40.3
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。8月は0.5%の低下です。 賃金収入を試算してみると(やはり近似計算です。)全体は名目では2.3%、実質では2.8%の十分な増加です。フルタイム労働者は2.6%の増加、パートタイム労働者は0.9%の増加です。帰属家賃を除く総合消費者物価指数は8月は0.5%の低下でした。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
15年3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
7月2.9(2.6)2.25.4
8月2.4(2.1)1.66.4
9月2.4(2.3)1.94.3
10月2.9(2.6)2.44.6
11月2.1(1.7)1.6(1.2)4.6(4.2)
12月2.3(2.1)1.8(1.6)4.9(4.7)
16年1月2.1(2.1)1.9(1.9)3.3(3.3)
2月2.6(2.2)2.9(2.5)3.1(2.7)
3月3.6(3.6)2.74.3
4月2.0(2.3)2.02.5
5月1.9(2.4)1.73.1
6月3.4(3.9)3.43.0
7月3.2(3.6)3.51.6
8月2.3(2.8)2.60.9
9月速報2.42.42.5
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年9月)」でも書きましたが、基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。労働投入、賃金収入の両面でフルタイム化が進んでいます。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング