「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年4月)」について
5月分の確報が発表されました。
常用雇用は、全体では対前年同月比2.0%の増加です。15年1月以降、1.9%から2.3%の狭い幅の中で増加が続いており、2%程度が巡航速度になった感がありますが、中身が変わりつつあります。5月の内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が1.5%と前月と同じ、パートタイム労働者の増加率は3.1%と前月より低くなっています。「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2016年3月)」で書いたように、このところ、フルタイム労働者の雇用の増加率が高くなり、パートタイム労働者のものが低くなってきていたのですが、やや巻き戻しが2か月続いているという状況です。
常用雇用の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
15年1月 | 2.0 | 1.1 | 3.9 |
2月 | 2.1 | 0.8 | 4.9 |
3月 | 1.9 | 0.6 | 4.6 |
4月 | 2.0 | 1.3 | 3.8 |
5月 | 2.0 | 1.4 | 3.5 |
6月 | 2.1 | 1.1 | 4.4 |
7月 | 2.0 | 0.9 | 4.7 |
8月 | 2.0 | 0.9 | 4.7 |
9月 | 2.0 | 1.3 | 3.9 |
10月 | 2.2 | 1.3 | 4.5 |
11月 | 1.6 | 1.1 | 4.5 |
12月 | 2.3 | 2.4 | 4.4 |
16年1月 | 2.1 | 1.4 | 3.6 |
2月 | 1.9 | 1.9 | 2.3 |
3月 | 2.1 | 1.9 | 2.8 |
4月 | 2.0 | 1.5 | 3.3 |
5月 | 2.0 | 1.5 | 3.1 |
総実労働時間は、常用労働者全体では0.8%の減少です。就業形態別にみると、フルタイム労働者が0.2%の減少です。パートタイム労働者は2.1%と前月に引き続き大幅に減少しています。
総実労働時間の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
15年1月 | 0.0 | 0.4 | △1.0 |
2月 | △0.2 | 0.5 | △0.5 |
3月 | 1.5 | 2.3 | △0.3 |
4月 | 1.2 | 1.5 | △0.2 | 5月 | △2.7 | △2.9 | △1.8 |
6月 | △0.1 | 0.4 | △1.2 |
7月 | △0.3 | 0.4 | △1.1 |
8月 | 0.3 | 0.7 | △0.2 |
9月 | △0.9 | △0.6 | △1.3 |
10月 | △2.7 | △2.6 | △1.4 |
11月 | 0.0 | 0.6 | △1.5 |
12月 | △0.2 | 0.2 | △1.0 |
16年1月 | △0.9 | △0.4 | △0.3 |
2月 | 0.4 | 0.6 | △0.5 |
3月 | 0.7 | 1.2 | △0.2 |
4月 | △1.5 | △1.0 | △2.4 |
5月 | △0.8 | △0.2 | △2.1 |
常用雇用の増加率と
総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、
労働投入を考えますと、1.2%の増加です。フルタイム労働者は1.3%増えているのに対し、パートタイム労働者の労働投入量は1.0%しか伸びていません。労働者数が増えているのは採用基準を引き下げ短時間しか働かないものを大量に採用しているのでしょう。
2月以降(4月を除く)労働者の数からいえばパートタイム労働者の割合は高まっているのに、労働投入では逆にフルタイム労働の割合が高まるという傾向がみられます。労働投入のフルタイム化という傾向が定着するか注目です。
総労働投入の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
15年1月 | 2.0 | 1.5 | 2.9 |
2月 | 1.9 | 1.3 | 4.4 |
3月 | 3.4 | 2.9 | 4.6 |
4月 | 3.2 | 2.8 | 3.6 |
5月 | △0.7 | △1.5 | 1.7 |
6月 | 2.0 | 1.5 | 3.2 |
7月 | 1.7 | 1.3 | 3.6 |
8月 | 2.3 | 1.6 | 4.5 |
9月 | 1.1 | 0.7 | 2.6 |
10月 | △0.5 | △1.3 | 3.1 |
11月 | 2.0 | 1.7 | 3.0 |
12月 | 2.1 | 1.6 | 3.4 |
16年1月 | 1.2 | 1.0 | 3.3 |
2月 | 2.3 | 2.5 | 1.8 |
3月 | 2.8 | 3.1 | 2.6 |
4月 | 0.5 | 0.5 | 0.9 |
5月 | 1.2 | 1.3 | 1.0 |
これに対して名目で見た一人当たりの平均賃金の動きです。
現金給与総額は、常用労働者全体では△0.1%の微減でした。フルタイム労働者は、0.2%増加しましたが、パートタイム労働者は0.0%の横ばいです。しかし、パートタイムの
所定内給与は0.1%の微減ですが、
所定内労働時間は2.1%も減少しています。1時間当たりの所定内給与では名目では2.0%、実質では2.5%の上昇です。これで労働投入が1.0%しか増加しないのですからパートタイム
労働市場のタイト化が進んでいるといえるでしょう。
名目賃金の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
14年12月 | 1.3 | 1.8 | △0.4 |
15年1月 | 0.6 | 0.9 | 0.3 |
2月 | 0.1 | 0.6 | 0.8 |
3月 | 0.0 | 0.6 | 0.6 |
4月 | 0.7 | 0.9 | 1.3 |
5月 | 0.7 | 1.1 | △0.6 |
6月 | △2.5 | △2.2 | △0.5 |
7月 | 0.9(0.5) | 1.3(1.0) | 0.7(0.4) |
8月 | 0.4(0.2) | 0.7(0.4) | 1.7(1.4) |
9月 | 0.4(0.3) | 0.6(0.5) | 0.4(0.3) |
10月 | 0.7(0.4) | 1.1(0.8) | 0.1(△0.2) |
11月 | 0.1(0.3) | 0.7(0.3) | △1.1(△1.5) |
12月 | 0.0(△0.2) | 0.4(0.2) | 0.5(0.3) |
16年1月 | 0.0(0.0) | 0.5(0.5) | △0.3(△0.3) |
2月 | 0.7(0.3) | 1.0(0.6) | 0.8(△0.4) |
3月 | 1.5(1.5) | 0.8 | 1.5 |
4月 | 0.0(0.3) | 0.5 | △0.8 |
5月 | △0.1(0.4) | 0.2 | 0.0 |
( )内は
消費者物価指数の
帰属家賃を除く総合で実質化したもの。5月は0.5%の低下です。
賃金収入を試算してみると(やはり近似計算です。)全体は名目では1.9%、実質では2.5%の大幅な増加です。フルタイム労働者は1.7%の増加、パートタイム労働者は3.1%の増加です。
帰属家賃を除く総合の
消費者物価指数は0.5%の低下でした。
雇用者所得の増加率(%)月 | 全体 | フルタイム | パートタイム |
---|
15年1月 | 2.6 | 2.0 | 4.2 |
2月 | 2.2 | 1.4 | 5.7 |
3月 | 1.9(△0.8) | 1.2 | 5.2 |
4月 | 2.7( 1.9) | 2.2 | 5.1 |
5月 | 2.7( 2.0) | 2.5 | 2.9 |
6月 | △0.4(△0.9) | △1.1 | 3.9 |
7月 | 2.9(2.6) | 2.2 | 5.4 |
8月 | 2.4(2.1) | 1.6 | 6.4 | 9月 | 2.4(2.3) | 1.9 | 4.3 |
10月 | 2.9(2.6) | 2.4 | 4.6 |
11月 | 2.1(1.7) | 1.6(1.2) | 4.6(4.2) |
12月 | 2.3(2.1) | 1.8(1.6) | 4.9(4.7) |
16年1月 | 2.1(2.1) | 1.9(1.9) | 3.3(3.3) |
2月 | 2.6(2.2) | 2.9(2.5) | 3.1(2.7) |
3月 | 3.6(3.6) | 2.7 | 4.3 |
4月 | 2.0(2.3) | 2.0 | 2.5 |
5月 | 1.9(2.4) | 1.7 | 3.1 |
「
毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年9月)」でも書きましたが、基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。最近不調を伝えられている消費も安定した伸びに復帰するだろうと考えています。パート労働者の1時間当たり所定内給与が上昇しても労働投入が増えないという局面が来るのか、注目です。
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