低賃金立国論?

2016年2月12日の日本経済新聞の「特区で外国人材の活躍をさらに進めよ」という社説は、まるで低賃金立国論のように思えてしまいます。 人手不足が進む日本では女性や高齢者と同様、外国人にもっと活躍してもらう必要がある。政府は受け入れをさらに広げる結論を出してほしい。  日本はこれまで「専門的・技術的分野」の外国人は受け入れるものの「単純労働者」などは受け入れない、としてきた。この二元論にとらわれ、必要な人材を確保できずにいるのが現状だ。 いやいや、「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年11月)」をお読みいただければ分かるように、多くの企業は採用に成功し、従業員数は増え続けています。  秋田県大潟村は、農業の担い手となる外国人に就労ビザを認めるよう政府に求めている。人口減が進む農村では家族経営が中心で、人材確保が難しいという。  農林水産省は、一定の実務経験や知識、技能を持つことを条件に、外国人受け入れに前向きだ。 家族経営が中心で労働力が不足しているなら、日本人を雇用すればいいのでは?今まで、人を雇ったことのない方が、人を使った経験を積んでいない方が、いきなり外国人を雇用するというのは飛躍が過ぎるのではないでしょうか?本当にうまくやれるのでしょうか?自分が払える賃金では、到底日本人を雇えないというのなら、人材などといわずに、低賃金労働者と呼んだ方が正確でしょう。 農水省の皆さんには、「2015年12月になってもまだ男の普通の仕事は足りない」という事情もあるので、実務経験や知識、技能の不足している日本人男性に訓練をして、ついでに農家に労働者を雇った場合、農家がどのような義務を負うのかをきちんと説明していただきたい。ついでに、労働者災害補償保険法や雇用保険法を農業にも強制適用するように整備してほしい。 秋田県大潟村は、農業の担い手となる外国人に就労ビザを認めるよう政府に求めている。人口減が進む農村では家族経営が中心で、低賃金労働者の確保が難しいという。  農林水産省は、一定の実務経験や知識、技能を持つことを条件に、低賃金の外国人受け入れに前向きだ。ということなら分かりやすいのですが、そうではないことを祈ります。  日本のファッションやアニメ・漫画などに憧れ、日本の専門学校に留学しているアジアの学生が多い。  しかし、彼ら彼女らが日本語を学びながら日本の美容師専門学校を卒業し、日本語で国家試験に合格しても、美容師として日本で働くことはできない。  アニメやホテルの専門学校を卒業した外国人が日本の企業から内定を得ても、入国管理局から在留資格を与えられず、帰国を余儀なくされた例もあるという。  こうしたクールジャパン人材が日本で働くことができれば、海外に日本の文化を発信する貴重な人材にもなり得る。卒業した後に日本で働けるよう、在留資格を見直すべきだ。 ここで挙げられている職種は低賃金の職種です。やはり不足しているのは人材ではなく低賃金労働者ではないのでしょうか? こうしたクールジャパン人材が低賃金で日本で働くことができれば、海外に日本の文化を発信する貴重な人材にもなり得る。卒業した後に低賃金で日本で働けるよう在留資格を見直すべきだということなら反対せざるを得ません。  外国人の処遇を日本人と同じにして、賃金が全体として下がらないようにする工夫は要る。 労働供給を増やして賃金を下がらないようにするというのは無理でしょう。少なくとも上がることはなくなります。また、低賃金労働者の割合が高くなれば平均賃金が低くなるのは理の当然です。現在低賃金である職場は、仕事不足が解消するにつれて賃金が上昇していくはずです。それを止めるようなことはすべきではありません。市場の調整に任せればいいのです。  そのうえで外国人の受け入れを丁寧に増やしていけば、地方を含め日本経済の活性化につながる。「外国人を積極的に受け入れる」としている安倍晋三首相は指導力を発揮してほしい。 そのうえで低賃金外国人労働者の受け入れを丁寧に増やしていけば、地方を含め日本経済の活性化につながる。「外国人を積極的に受け入れる」としている安倍晋三首相は指導力を発揮してほしい。ということでしょうか? 現在必要なのは低賃金の職場を温存することではありません。市場の調整メカニズムに任せて低付加価値、低賃金の職場から高付加価値、高賃金の職場に人を移すこと、低付加価値の職場を高付加価値の職場に変えることです。 低賃金立国というのはどう考えても無理だと思います。 人気blogランキングでは「社会科学」の10位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング