消費の動向が分からない根本的な理由

(2015年12月31日追記あり)

消費の動向の把握が、経済運営にとって極めて重要であることは言うまでもないでしょう。

それなのになぜ、統計で把握できないのか?根本的な理由を説明しておきましょう。

家計が、企業(生産者・販売者)から消費財、サービスを購入することが景気に関係のある消費です。消費に関する取引の記録、どのような財・サービスを、どの消費者が、どの企業から買ったか、その取引の記録がすべて文書や電子データの形で存在しており、それを国が利用できれば、全数調査なり抽出調査なりを実施して消費の動向を把握することができます。さらに、消費者の属性、たとえば性、年齢、配偶者の有無、居住地、年収なども分かっていれば、詳細な分析が可能です。企業の属性についても同じことが言えます。

しかし、残念ながらそのようなデータは、現在のところ利用不可能です。事実は存在するのですが、データはありません。取引の際、領収書やレシートがあるとは限りません。あったとして、誰が売ったのかが書いてあるケースは多いでしょうが、だれが買ったのかも書いてあるとは限りません。企業がお客さんお名前を知っているとは限りません。百貨店の外商や自宅に出入りする電器店などは、分かるでしょうが、ごく普通のスーパーやコンビニ、商店街の小売店などは、分からないでしょう。現金の支払いで済むからです。領収書をもらうことはあまりありませんし、レシートに名前は書いてありません。あっても、そのような文書を消費者が保管しているとも限りません。さらに、すべての消費者に記録の提出を求めることも無理です。これが、消費の動向を把握できない根本的な原因です。

すると、「家計調査のカバー率」で書いたように、不完全なカバー率しかない家計データや、主に消費財やサービスを販売している企業を調べるほかありません。(家計調査の対象を広げようと思っても、施設に入居しているお年寄りに、詳細な記録をつけろというのは無理な話です。)それらの企業が消費財やサービス以外のものを売っている可能性はありますし、主に消費財やサービスを売っているわけではない企業が、それらを売ることもあります。加えて、消費財やサービスの買い手が消費者であるとも限りません。

不完全な調査により、把握するほかはないのです。であれば、せめてもっと予算と人手をかけて、調べるべきでしょう。財務大臣総務大臣が議論すべきは、統計につぎ込まれているリソースが適切な量であるかどうかでしょう。

財務大臣総務大臣には、統計について細かい議論をするよりも、(されたいならおやりになることに異存はありませんが、)もっと基礎的な議論をしていただきたいものです。

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