毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年10月)

10月分が発表されました。 常用雇用は、全体では対前年同月比2.2%の増加です。これで7月から10月まで4か月連続して2.0%を超えたことになります。内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が9月と同じ1.3%であり、パートタイム労働者の増加率は4.5%となっています。10月は6月の動きとよく似たものになりました。一般の伸びもパートの伸びもかなり高いという状況です。念のためパートタイム労働者の季節調整値で前月比を見ると0.6%とかなり高い水準です。どこまで増え続けるのか分かりません。 もう一つの注目点は、製造業の一般雇用が0.2%とわずかな増加率ですが増えたことです。これは2012年6月以来のことです。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月1.4 0.63.3
5月1.40.73.1
6月1.51.02.8
7月1.71.13.0
8月1.71.32.4
9月1.71.12.9
10月1.61.02.8
11月1.61.12.8
12月1.71.22.8
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
7月2.00.94.7
8月2.00.94.7
9月2.01.33.9
10月2.21.34.5
総実労働時間は、常用労働者全体では2.7%の短縮です。9月に減少に転じましたので、2月連続です。就業形態別にみると、フルタイム労働者は2.8%短縮、パートタイム労働者は1.5%の短縮です。 10月の総労働時間の減少は、昨年より土曜日が1日多く、水曜日が1日少ないというカレンダー効果によるものでしょう。まず、所定内労働時間が3%減っていますが、所定外労働時間は、所定外労働時間は0.6%しか減っていません。次に、完全週休二日制が普及している電気・ガス業、金融業、保険業、などが出勤日数が減っており、飲食サービス業、生活関連サービス業ではあまり減っていません。最後に卸売業、小売業、飲食サービス業などの割合が高いパートタイム労働者の減り方が一般労働者の減り方を下回っています。 11月は逆に土曜日が1日少なく、平日が1日多かったので、逆の現象が起こると予想しています。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月△0.7△0.2△0.4
5月△0.8△0.4△0.8
6月0.51.0△0.1
7月0.71.0△0.2
8月△1.6△1.5△1.9
9月0.50.8△0.2
10月0.51.2△1.4
11月△2.7△2.7△2.0
12月△1.1△0.7△1.7
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
7月△0.30.4△1.1
8月0.30.7△0.2
9月△0.9△0.6△1.3
10月△2.7△2.6△1.4
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えますと、0.5%の減少です。カレンダーの影響を考え合わせると増加の基調に変化はないようです。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
7月1.71.33.6
8月2.31.64.5
9月1.10.72.6
10月△0.5△1.33.1
これに対して名目で見たひとり当たりの平均賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では8月と同じく0.7%増加しています。フルタイム労働者は、1.1%の増加、パートタイム労働者はやや下回る0.1%の増加です。 パートタイムの所定内給与は0.1%の増加、所定内労働時間は1.5%の短縮ですから、1時間当たりの所定内給与では1.6%の上昇です。実質で見ても1.3%の上昇です。賃金率が上がり雇用が増えているのですから、パートタイム労働市場の需給はタイト化しています。しかし、雇用は高い割合で増加し続けているので供給源が枯渇している訳ではありません。 フルタイム労働者の所定内給与は0.5%の増加、所定外給与も2.1%増えています。9月よりの増加が加速しています。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.71.20.9
5月0.61.00.8
6月1.01.50.7
7月2.43.01.0
8月0.91.30.6
9月0.71.10.5
10月0.20.60.2
11月0.10.7△1.1
12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
7月0.9(0.5%)1.3(1.0%)0.7(0.4%)
8月0.4(0.2%)0.7(0.4%)1.7(1.4%)
9月0.4(0.3%)0.6(0.5%)0.4(0.3%)
10月0.7(0.4)1.1(0.8)0.1(△0.2)
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。10月の指数は0.3%の上昇でした。 雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では名目では2.9%と大幅な増加です。フルタイム労働者は2.4%の増加、パートタイム労働者は4.6%の大幅増加です。帰属家賃を除く総合の消費者物価指数は0.3%の上昇でしたので、全体は実質でも2.6%と大幅な増加です。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
4月2.11.84.2
5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
15年1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
7月2.9(2.6)2.25.4
8月2.4(2.1)1.66.4
9月2.4(2.3)1.94.3
10月2.9(2.6)2.44.6
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。 「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年9月)」でも書きましたが、基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。消費も安定した伸びを続けるだろうと考えています。 ただし、完全雇用にあるとは考えていません。現在、低賃金の労働市場であるパートタイム労働市場では、1時間当たり賃金が1%程度上昇すれば、雇用が4%程度増加するという状態が続いています。本当に完全雇用になったら、賃金を上げても、中賃金、高賃金の職に移るために、パートタイム労働者の雇用は減るはずです。現状は完全雇用からほど遠いといわざるを得ません。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング