毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年7月分確報)

7月分の確報が発表されました。 常用雇用は、全体では2.0%の増加です。15年に入ってから2%程度の伸びが続いてます。内訳をみるとフルタイム労働者(一般労働者)の増加率が0.9%であるのに対してパートタイム労働者の増加率は4.7%とかなり高くなっています。「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年6月分確報)」で、「一般労働者の増加率に比べてパートタイム労働者の増加率がこれほど高いと、常用労働者全体の平均労働時間は短くなり、平均賃金は下がります。これらを見るときに注意が必要です。」と書きましたが、7月はさらにその効果が大きくなっています。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月1.4 0.63.3
5月1.40.73.1
6月1.51.02.8
7月1.71.13.0
8月1.71.32.4
9月1.71.12.9
10月1.61.02.8
11月1.61.12.8
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
7月2.00.94.7
総実労働時間は、常用労働者全体では0.3%減少しています。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.4%増加、パートタイム労働者は1.1%の減少です。6月は長くなっていたフルタイム労働者の所定外労働時間0.4%短くなっています。パートタイムの所定内労働時間は6月に引き続き1.0%減っています。出勤日数も0.2日減っています。パートタイム労働者の割合が高まったことが全体の総労働時間の短縮をもたらしています。 パートタイム労働者の人数は増えていますので、本当に短時間しか働かない労働者でも企業がえり好みせずに採用をしている可能性が高いと思われます。これによって、就業経験がない、あるいはアルバイト程度しかないという理由で採用してもらえなかった30歳代、40歳代の男性がパートタイム労働であっても仕事に就けるようになるといいのですが。ある程度長く勤めれば、仕事ができることを示すことができます。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月△0.7△0.2△0.4
5月△0.8△0.4△0.8
6月0.51.0△0.1
7月0.71.0△0.2
8月△1.6△1.5△1.9
9月0.50.8△0.2
10月0.51.2△1.4
11月△2.7△2.7△2.0
12月△1.1△0.7△1.7
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
7月△0.30.4△1.1
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えます。労働投入は1.7%増加しています。増加の基調に変化はないようです。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
7月1.71.33.6
これに対して名目で見たひとり当たりの平均賃金の動きです。6月分では大きく減って話題になった現金給与総額は、常用労働者全体では0.9%増加しています。フルタイムは、1.3%の増加、パートタイムも0.7%の増加です。 パートタイムの所定内給与は1.0%の増加、所定内労働時間は1.1%の短縮ですから、1時間当たりの所定内給与では2.1%の大幅な上昇です。実質で見ても1.8%の上昇です。賃金率が上がり雇用が増えているのですから、パートタイム労働市場の需給はタイト化しています。 フルタイム労働者の所定内給与は6月に引き続き0.8%の増加、所定外給与も1.2%増えています。順調です。6月に大幅に減った特別給与は2.7%増加しています。支給時期の繰り延べがあったとすればもっと伸びるかと思っていました。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.71.20.9
5月0.61.00.8
6月1.01.50.7
7月2.43.01.0
8月0.91.30.6
9月0.71.10.5
10月0.20.60.2
11月0.10.7△1.1
12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
7月0.9(0.5%)1.3(1.0%)0.7(0.4%)
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。7月の指数は0.3%の上昇でした。8月も同じ上昇率です。 名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では名目では2.9%と大幅な増加です。フルタイム労働者は2.2%の増加、パートタイム労働者は5.4%の増加です。帰属家賃を除く総合の消費者物価指数は0.3%の上昇でしたので、全体は実質でも2.6%と大幅な増加です。スーパーやコンビニの売り上げが増えているようですが、平仄はあっています。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
4月2.11.84.2
5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
15年1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
7月2.9(2.6)2.25.4
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。 基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきていて、改善基調に変化はないというのが私の判断です。消費も安定した伸びを続けるだろうと考えています。 人気blogランキングでは「社会科学」の番外でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング