毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年6月分確報)

毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年5月分確報)」の続きです。 常用雇用は、全体では2.1%の増加です。15年に入ってから2%程度の伸びが続いてます。フルタイム労働者(一般労働者)の増加率は1.1%です。パートタイム労働者の増加率は4.4%です。一般労働者の増加率に比べてパートタイム労働者の増加率がこれほど高いと、常用労働者全体の平均労働時間は短くなり、平均賃金は下がります。これらを見るときに注意が必要です。 常用雇用の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月1.4 0.63.3
5月1.40.73.1
6月1.51.02.8
7月1.71.13.0
8月1.71.32.4
9月1.71.12.9
10月1.61.02.8
11月1.61.12.8
15年1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
3月1.90.64.6
4月2.01.33.8
5月2.01.43.5
6月2.11.14.4
総実労働時間は、常用労働者全体では0.1%減少しています。6月は昨年に比べて日曜日が1日多かったので、もっと短くなってもいいのですが。就業形態別にみると、フルタイム労働者は0.4%増加、パートタイム労働者は1.2%の減少です。5月は短くなっていたフルタイム労働者の所定外労働時間0.4%長くなっています。3月、4月、5月と続いた減少から増加に転じています。パートタイムの所定内労働時間は1.0%減っています。出勤日数も0.2日減っています。人数は増えていますので、本当に短時間しか働かない労働者でも企業がえり好みせずに採用をしている可能性があります。 総実労働時間の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月△0.7△0.2△0.4
5月△0.8△0.4△0.8
6月0.51.0△0.1
7月0.71.0△0.2
8月△1.6△1.5△1.9
9月0.50.8△0.2
10月0.51.2△1.4
11月△2.7△2.7△2.0
12月△1.1△0.7△1.7
15年1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
3月1.52.3△0.3
4月1.21.5△0.2
5月△2.7△2.9△1.8
6月△0.10.4△1.2
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えます。労働投入は2.0%増加しています。5月の減少は特殊要因によるものだったのでしょう。基調に変化はありません。 総労働投入の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
15年1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
3月3.42.94.6
4月3.22.83.6
5月△0.7△1.51.7
6月2.01.53.2
これに対して名目平均賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では2.5%減少しています。フルタイムは、2.2%の減少に転じました。パートタイムは5月の減少に引き続き、0.5%の減少です。パートタイムの所定内給与は0.1%の増加、所定内労働時間は1.0%の短縮ですから、1時間当たりの所定内給与では1.1%の上昇です。賃金率が上がり雇用が増えているのですから、パートタイム労働市場の需給はタイト化しています。こちらに問題はありません。 フルタイム労働者の所定内給与は0.8%の増加、所定外給与も0.5%増えています。大きな問題はありません。特別給与は6.0%と大幅な減少です。支給時期の繰り延べによるものなのか、7月の結果に注目です。 名目賃金の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
14年4月0.71.20.9
5月0.61.00.8
6月1.01.50.7
7月2.43.01.0
8月0.91.30.6
9月0.71.10.5
10月0.20.60.2
11月0.10.7△1.1
12月1.31.8△0.4
15年1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
3月0.00.60.6
4月0.70.91.3
5月0.71.1△0.6
6月△2.5△2.2△0.5
名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では名目では0.4%の減少です。フルタイム労働者は1.1%の増加、パートタイム労働者は3.9%の増加です。全体は実質で0.9%の減少です。消費税率引き上げの影響が消えた4月以降増加していたのですが。これは、一般労働者(フルタイム労働者)の特別給与の減少だけによるものです。 雇用者所得の増加率(%)
全体フルタイムパートタイム
4月2.11.84.2
5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
15年1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
3月1.9(△0.8)1.25.2
4月2.7( 1.9)2.25.1
5月2.7( 2.0)2.52.9
6月△0.4(△0.9)△1.13.9
(  )内は消費者物価指数帰属家賃を除く総合で実質化したもの。 基本的には雇用が増加し、労働力の需給はタイト化してきています。改善基調に変化はないというのが私の判断です。 人気blogランキングでは「社会科学」の9位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング