2015年度の税収見積もりは議論の土台にならない

基礎的財政収支の改善方策についていろいろな議論が行われている。

議論の土台になっているのは、2015年度の税収見積りである。どうも当てにならないのではないかという気がしてきた。実績とのかい離が大きすぎるのである。実績は現時点では6月分(http://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/taxes_and_stamp_revenues/h201506.htm)までしか分かっていないので、月々の変動があまり大きくない所得税のうち源泉(徴収)分について検討してみたい。

まず、見積額は13兆7千億円ほどで、2014年度の実績14兆円を2.3%下回ると見積もられている。見積もりをした時点では実績は分かっていなかったので、こういうことになったのだが、今にしてみると控えめすぎる見積もりだろう。景気がよくなってきているのに税収が減るというのはおかしい。

6月までの実績を見ると、累計は1兆6千億円強で、2014年度の6月までの累計、1兆5千億円弱を10%強上回っている。「「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年5月分確報)」について」でしましたように、常用労働者の平均賃金×常用労働者数で計算した常用労働者全員の賃金合計額(もっとも税金を取りやすい所得であろう。)は2%以上増えている。整合的だろう。

もし、2015年度を通じて6月までの伸び率が維持されたとすると、税収は15兆5千億円ほどになる。見積もりを1兆8千億円以上も上回る数字である。基礎的財政収支の均衡達成へのハードルはこの分低くなる。(私はGDPに対する国債発行残高を一定に保つためには、均衡では足りず黒字化が必要だと考えているが。)

税制や経済政策を考えるときには、2015年の税収見積もりをそのまま使うべきではない。

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