毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年2月確報)

2月の確報が発表されました。2月の特徴はパートタイム労働者の人数が4.9%と大幅に伸びたことです。これによって賃金や労働時間の平均値が引き下げられていますので、読み方に注意が必要です。 もう一つの特徴は、1月に引き続いて常用労働者全体が受け取った賃金の総額が実質でみてほぼ横ばいになったことです。 雇用の動きを見ると、2014後半より少し良くなっているようです。常用雇用全体では2.1%増加、一般労働者は0.8%と最近の動きからみるとやや低めの増加ですが、パートタイム労働者は4.9%も増加しています。後でみますが、パートタイム労働者の所定労働時間は短くなる傾向にあり、これまで管理の手間などを考えて採用しなかった本当に短時間しか働かない労働者を採用している可能性があります。4月の大学入学者は昨年に比べて減ったようで、都市部のアルバイトの供給は減っている可能性があります。アルバイトに割く時間減らせる分だけ、学問に時間をかけてくれるといいのですが。今後の動きに注目していきたいと思います。 常用雇用の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
4月1.4 0.63.3
5月1.40.73.1
6月1.51.02.8
7月1.71.13.0
8月1.71.32.4
9月1.71.12.9
10月1.61.02.8
11月1.61.12.8
1月2.01.13.9
2月2.10.84.9
総実労働時間は、全体では0.2%減っています。ただ、就業形態別にみると、一般(フルタイム)労働者は0.5%増加しており、これをパートタイムの0.5%減少と、パートタイム労働者割合の高まりが打ち消した結果です。フルタイム労働者の所定外労働時間は1.1%長くなっています。引き続き高い水準です。 総実労働時間の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
4月△0.7△0.2△0.4
5月△0.8△0.4△0.8
6月0.51.0△0.1
7月0.71.0△0.2
8月△1.6△1.5△1.9
9月0.50.8△0.2
10月0.51.2△1.4
11月△2.7△2.7△2.0
12月△1.1△0.7△1.7
1月0.00.4△1.0
2月△0.20.5△0.5
常用雇用の増加率と総実労働時間の増加率を足して(近似値になります。)、労働投入を考えます。労働投入は1.9%増加しています。おおむね安定した増加が続いたといっていいでしょう。労働需要が大きく崩れる傾向はうかがえません。 総労働投入の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
4月0.70.42.9
5月0.60.32.3
6月2.02.02.7
7月2.42.12.8
8月0.1△0.20.5
9月2.21.92.7
10月2.12.21.4
11月△1.1△1.6△0.8
12月0.60.51.1
1月2.01.52.9
2月1.91.34.4
これに対して名目賃金の動きです。現金給与総額は、常用労働者全体では0.1%しか増加していませんが、フルタイムは、0.6%の増加、パートタイムは、0.8%の増加です。全体の増加率が低いのはパートタイム労働者の構成割合の高まりが全体の増加を抑えた結果です。 名目賃金の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
4月0.71.20.9
5月0.61.00.8
6月1.01.50.7
7月2.43.01.0
8月0.91.30.6
9月0.71.10.5
10月0.20.60.2
11月0.10.7△1.1
12月1.31.8△0.4
1月0.60.90.3
2月0.10.60.8
所定内給与は、全体では0.0%の横ばいですが、フルタイムは0.4%、パートタイム労働者が0.9%の増加となっています。パートタイム労働者の所定内労働時間は0.5%0.9%減っていますので、1時間当たりに直すと1.4%の上昇です。安定した上昇です。パートタイム労働者の所定内労働時間はおよそ1年間減少が続いています。旧サンプルでも、修正された結果からみても同じです。パートタイム労働市場のタイト化は進んでいるといっていいでしょう。2年前に比べると1時間当たり名目所定内給与は1%ぐらい増え、所定内労働時間は給与は2%くらい短くなっています。1時間当たり所定内給与は3%ぐらい高くなったと思われます。 名目でみた雇用者所得はどうなっているか、試算してみると(やはり近似計算です。)全体では2.2%の増加です。フルタイム労働者は1.4%の増加ですが、パートタイム労働者は5.7%と高い伸びになっています。 雇用者所得の増加率(%)
規模全体フルタイムパートタイム
4月2.11.84.2
5月2.01.73.9
6月2.52.53.5
7月4.14.14.0
8月2.62.61.8
9月2.42.23.4
10月1.81.63.0
11月1.71.81.7
12月3.03.02.4
1月2.62.04.2
2月2.21.45.7
実質でみると、0.2%の減少です。ほぼ横ばいとみていいでしょう。雇用が増えていることを考えると、消費が大きく減少する恐れはありません。 「毎月勤労統計でみる労働経済の動き(2015年1月確報)」で、「2月、3月でで雇用や賃金が崩れた様子はありません。4月以降消費税率引き上げの特殊要因がなくなるので、物価上昇率は低くなり、名目雇用者報酬が今の調子で増加すれば、実質で報酬が増えることになります。消費の拡大が期待できます。」と書きましたが、この考えに変更はありません。 今週22日に発表される予定の貿易統計の結果も注目です。 人気blogランキングでは「社会科学」の13位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング