少し別の見方

山崎元先生が、「賃上げはどこまで続くのか?」で、次のように書かれています。

1月の実質賃金は前年同月比1.5%減でした。

 賃金は確かに上昇していますが、消費税増税分まで含めた物価上昇率に追いついてはいません。普通の生活をしていると消費税は払わなければなりませんから、平均的勤労者が実質的に貧しくなっているというのが実際です。

 山崎先生は現状について、やや悲観的であるようにお見受けしますが、これについては、私は少し別の見方をしています。「平均的勤労者」そのものが変わっているのです。

 ご指摘の通り毎月勤労統計の1月分速報で(平均)賃金(統計で使われている言葉では常用労働者の現金給与総額)が1.5%下がったのはその通りです。しかし、常用労働者が1.8%増加していることを見逃すべきではありません。 これまで雇われていた労働者の賃金が変わらなくとも、新たに雇われた労働者の平均賃金が低ければ平均賃金は下がります。雇用の拡大局面では、このような現象が起こりがちです。また、パートタイム労働者の現金給与総額だけを見ると名目で0.1%減っていて、パートタイム労働者が貧しくなったように見えます。しかし、所定内労働1時間当たりの所定内給与は0.9%増加しています。賃金の減少の要因は労働時間の短縮なのです。不景気で仕事がなくなって時間が短くなったのではなく、仕事不足の解消に伴って、これまで管理の手間がかかったりするため雇わなかった短時間でも働く労働者を企業がパートタイムで雇い始めたためでしょう。

 経験の浅い労働者(比較的若い労働者が多いと思われます。)、短時間しか働かない労働者(主婦や高齢者が多いのではないでしょうか。)の占める割合が高まることによって名目平均賃金が下がり、消費税引き上げに伴う消費者物価の上昇と組み合わさって、実質でみた平均賃金が下がっている面があります。昨年も働き、今年も働いている労働者の賃金が下がっているとは限りません。また、当然のことですが、昨年は働いていなかった、働けなかったが、今年は働いている労働者の実質賃金が増加しています。 

 また、常用労働者が1.8%増加しているので、1月ですら常用労働者全員が受け取った賃金の総額は実質で0.3%増加しています。日本の消費の総額は増えやすくなっています。

 

 現状は、そう悪いものでもないと思います。

 将来に目を向ければ、4月以降は、消費税引き上げの効果がなくなり、消費者物価の上昇率は小さくなる野はほぼ確実です。名目賃金の上昇が続けば、実質賃金の上昇が期待できます。

 将来については、先生の「今後がどうなるのかは難しい問題です。2017年度には消費税率10%への引き上げが(一応は)決まっていて『不景気が予約されている』ことが気懸かりですが、2015年度、2016年度はまずまずの雇用と賃金の環境が続くと期待して良いのではないでしょうか。」というご見解に賛成です。外部から負のショックが来ないという前提ですけれど。

 ついでですが、2017年度に消費税率を一挙に2%も引き上げるのはやめて、せめて2回に分けて1%ずつ引き上げにしたほうがいいと思います。税収が予算の見積もりよりも増えていることですし。

 私は現状については先生よりも楽観的で、近い将来については先生と同じように楽観的です。もちろんこれは株価の話ではなく、経済や家計の先行きの話です。

 もうひとつ書かれている賃上げへの政府の介入については、問題が複雑なので近く別にエントリーを書くつもりです。

(※ 1月分の毎月勤労統計の確報は31日公表予定です。これを待って、エントリーを書く予定です。ここで示した数字は速報のものですので変わる可能性があります。)

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