「輸出数量はなぜ増えないか?値下げしないから。」について

輸出数量はなぜ増えないか?値下げしないから。」で次のように書きました。 円安になってかなり時間がたつのに輸出数量が増えていません。なぜでしょうか?円安を利用して値下げをしないのが、大きな要因です。 円安を利用して価格を下げなかったことを、日本銀行の企業物価統計で確認しておきます。この統計では、輸出物価契約通貨ベースのものと円ベースのものの2種類があります。 契約通貨ベースと円ベース企業物価の変化率(前年同期比%)
期間契約通貨ベース円ベース
2011年3.1△2.2
2012年△1.5△2.0
2013年△1.811.7
2014年1-3月△2.44.5
4-6月△1.40.9
2012年は円ベースでは物価は下落していましたが契約通貨ベースでは上昇していました。海外市場では値上げをしていたわけです。2012年には、やはり円ベースでは下落し、契約通貨ベースでも下落です。ただ、契約通貨ベースでの下落率は円ベースほどではありませんでした。 2013年には状況が円ベースの状況が一変しました。下落から11.7%の上昇へと劇的な変化です。輸出採算が向上したことは明らかです。一方、契約通貨ベースでは大きな変化はありませんでした。1.8%の下落です。つまり円安を利用して価格を下げるのはほどほどにしておいて、円建て価格を維持したのです。もっとも契約通貨の3割から4割は円ですから、円建て価格を上げることによって自動的に契約通貨ベースでも価格は上昇します。 2014年に入っても契約通貨ベースでは2%前後の下落が続いています。円ベースの価格上昇の勢いは弱まっています。2014年1-3月の上昇は4.5%と一桁台に落ち、4-6月期はほぼ横ばいになりました。 円安が止まったので、これを利用した輸出採算向上はできなくなったといえるでしょう。再度円安に転じない限り、今後は価格を維持しつつ、輸出数量を増やし、かつ、採算も向上させるという課題に取り組まなければなりません。企業の経営者の努力が求められます。同時に、円安に頼らない経済運営が政府に求められています。 人気blogランキングでは「社会科学」の21位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング