2013年1-3月期DGP一次速報が発表され、いろいろ評論が出ている。その中で有力なのが今後の設備投資が焦点であるという見解であり、その基礎には「早く
財政出動をやめなければ」、という思いがあり、その延長には、「何とかして早く設備投資を増やささなければ」という焦りがありそうである。
「経済を良くするって、どうすれば」というブログの「経験的事実としての経済」というエントリーに次のようなことが書かれている。大筋賛成である。
多くの場合、「設備投資増→雇用増→所得増→消費増」となるのだから、いきなりの賃金アップを構想しても虚しい。さらに、その設備投資もまた、実現させるには、順序というものがある。
それは、「金融緩和→輸出増・住宅増・財政増→需要増→設備投資増」である。ポイントは、経済学の教科書にはない、金融緩和から設備投資増までの間に「はさまっているもの」である。こういう理解があると、経済の動向に対する眺望は格段に良くなる。反対に、この理解がないと、「金融緩和をしてるのに、なぜ景気は回復しない」と首を捻るばかりとなる。 (
http://blog.goo.ne.jp/keisai-dousureba/e/a0f4b56107408c7c27c98a71938f4d31)
僭越ながら、少し追加・修正を加えたい。
「金融緩和・財政増→輸出増・住宅増・財政増→需要増→生産増→設備稼働率上昇→設備不足感の高まり→設備投資増」
金融緩和は必ずしも財政増にはつながらないと思うので、財政増を独立した要因に改めた。次に、需要増があれば生産は増えるが、
稼働率が低い段階では設備投資は増えず、少しぐらい高まっても、設備が十分にあると感じていれば設備投資はなされないと考えるので、「→生産増→設備
稼働率上昇→設備不足感の高まり→」を挿入した。
また、消費増への回路として、書かれているものとは別に、次の二つの流れも付け加えたい。
「生産増→労働時間増加→非正規雇用増(続けば非正規労働者の賃金上昇)→非正規労働者の所得増→非正規労働者の消費増」
「生産増→労働時間増加→正規労働者の残業時間増加→正規労働者の所得増→正規労働者の消費増」
さて、問題は設備投資である。16日には
鉱工業生産指数の3月の確報が発表された。製造工業の
稼働率には速報がなく、確報だけである。マスコミは速報には関心を向けるが、確報にはあまり関心を示さない。その結果重要な指標であるのに、これがあまり取り上げられないのは残念である。
3月の実績を見ると次のようになる。
製造工業の生産能力、生産、稼働率(2005年=100)年 | 生産 | 生産能力 | 稼働率 |
---|
2007 | 107.4 | 105.3 | 103.7 |
2010 | 94.5 | 108.3 | 88.9 |
2011 | 92.1 | 108.3 | 85.4 |
2012 | 91.9 | 106.5 | 87.8 |
2012年3月 | 102.1 | 107.3 | 97.3 |
2013年3月 | 95.3 | 106.4 | 89.4 |
稼働率も指数で2005年の
稼働率を100とした場合の値である。
稼働率そのものを示すものではない。日本のGDPギャップが0に近かった2007年の
稼働率指数は103.7だったので、これを正常とみるのがいいと思う。
これでみると、まだまだ
稼働率は低い。設備は余っているのである。投資が出てくる環境ではない。このような環境の中で無理に投資を促進するような政策はとるべきではない。業種により設備が不足しているなら、自然に投資は行われる。無理に国民の負担で投資を増やす必要はない。
無理に投資を促進すれば、それは投資バブルを生み、そのあとで過剰設備に悩むことになる。政府はじっくりと腰を据えて、金融政策、財政政策を通じて、雇用、所得、消費の維持・拡大を図っていくべきである。その成果が出てくれば、おのずと適正な水準の投資は出てくる。今は、投資を焦点とすべきではない。
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