被災地の外への避難を

ずいぶん前に「避難所と仮設住宅の間」というエントリーでこんなことを書きました。

地元を離れられない事情はあろうと思うのですが、交通が回復したときに一時的に災害弱者を、インフラの機能が損なわれていない地域に移動してもらい、ビジネスホテルでも旅館でも利用して、そこで仮設住宅の建設を待ってもらうということも考えていいのではないでしょうか?

今回は、このようなスキームができています。にもかかわらず、利用者はあまり増えていないようです。はっきりした数字があるわけではないので断言はできません。

しかし、できれば利用されたほうがいいと思います。それも内陸部に異動されることをお勧めします。

前提条件として、地震津波により防潮堤、堤防、道路、上下水道、発送電設備、病院、介護施設といったインフラが打撃を受けています。山崩れの箇所もたくさんあります。また、自衛隊、警察、消防、一般の行政も目いっぱいの活動を長期にわたって続けていて、疲労が蓄積し、新たな事態に対処する余裕がないだろうということもあります。

さらに、作るべき仮設住宅の数がきわめて多く、かつ、安全な仮設住宅を作るための土地がないという問題があります。高台に土地があっても、道路、上下水道、送電設備などを一から作らなければならないとなると、短期間では建設できません。今年の夏までには到底間に合わないでしょう。今年の冬ですら十分できているとは限りません。

このような前提で考えると、いくつかの危険があります。

今回の場合、大規模な余震+津波の発生の恐れがあります。さらに、もうすぐに梅雨の季節が来ます。長雨や集中豪雨の危険があります。梅雨が過ぎれば台風シーズンが来ます。普段なら耐えられる自然災害にも、現在は耐えられません。避難所から避難せざるを得ないかもしれません。その時になって移動するのは大変危険です。

(2011年4月23日追加 参考まで)

大雨と強風及び高波に関する宮城県気象情報 第3号

平成23年4月23日16時41分 仙台管区気象台発表

(見出し)

宮城県では、24日未明にかけて大雨となる見込みです。また、23日夜は

強い雨の降る所があるでしょう。土砂災害に警戒し、低地の浸水や河川の増

水に注意して下さい。また、強風や高波、高潮にも注意して下さい。

(本文)

【気象状況】

低気圧が日本海にあって北東に進んでおり、寒冷前線が東日本、西日本にの

びています。低気圧や前線に向かって、南から湿った空気が流れ込んでいま

す。23日夜には別の低気圧が日本海に発生し、寒冷前線が23日夜遅くか

ら24日未明にかけて宮城県を通過するでしょう。

【雨】

<地域・時期・量的予想>

宮城県は、24日未明にかけて大雨となる見込みです。また、23日夜は1

時間に20ミリの強い雨の降る所があるでしょう。

24日18時までに予想される24時間降水量は、多い所で

  山沿い 70ミリ  平地 40ミリ です。

<防災事項>

これまでの地震の影響で地盤が緩んでいます。がけ崩れ、山崩れなどの土砂

災害に警戒してください。

また、低地の浸水や河川の増水に注意して下さい。

【風・波・高潮】

<地域・時期・量的予想>

東部では、24日明け方にかけて南のち西よりの風が海上を中心に強く、海

はしける見込みです。また、24日朝にかけて、満潮時を中心に潮位が高い

でしょう。

24日明け方にかけて予想される最大風速は、

 海上    15メートル

 東部の陸上 13メートル

 

24日にかけて予想される波の高さは、

 4メートル です。 

<防災事項>

強風や高波に注意して下さい。

地震津波で被害を受けた地域の海岸や河口付近では、浸水や冠水に注意し

て下さい。

(追加部分終わり)

次に、感染症の発生の恐れがあります。衛生状態は確実に悪化していきます。掃除も行き届かないでしょうし、トイレも十分な状態にはありません。プライバシーのない集団生活を夏まで続け他時の精神的、肉体的ストレスの蓄積は、病気への抵抗力を奪います。そもそも、狭い場所に大勢の人が集中しているということ自体、感染症の蔓延の条件です。

第三に、夏の暑さの問題があります。体育館、学校、市民会館など避難所は比較的大きな空間です。こういうところはクーラーが効きにくいのです。人によって望ましい涼しさには、差がありますが、そいうった対応もできません。体力の消耗は避けられないでしょう。、「去年の夏は日本人には暑すぎた。熱中症の死者激増」で紹介したような事態が避難所で次々と発生しかねません。同じことは冬の寒さについてもあてはまります。

端的に言ってしまえば、避難所は安全とは言えないのです。避難するなら安全なところに避難すべきです。

そして、今、現地で支援している皆さんの力が尽きるという恐れがあります。現地にいるのは限られた人数です。不眠不休の努力はもう続きません。自衛隊もいつまでも10万人体制をとることはできないでしょう。被災地内で避難している方が被災地の外へ出てもらえれば、世話をできる人数はずっと増えます。世話をすべき人が減れば、被災地内で支えている人の負担も減ります。

特に自衛隊などは今後起こるかもしれない災害に備えて、休養を取っておくなり、堤防の修理を始める、がれきを片付けておくといった活動に重点を移すべきでしょう。

大変だとは思いますが、被災地の外への避難をお勧めします。

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