湘南鎌倉市、湘南市、相模市、相模原市が政令指定都市に。神奈川県は解散。

4月1日、鎌倉湘南市、湘南市、相模原市、相模市が政令指定都市に昇格した。これにより神奈川県は横浜市川崎市を加えた6政令指定都市のみで構成される。これまで神奈川県が行ってきた事務のほとんどは、政令指定都市に移管され、残りの農業と警察などの事務は6市で構成される広域事務組合が担うこととなった。これに伴い神奈川県は廃止された。 鎌倉湘南市は、旧横須賀市鎌倉市、逗子市、三浦市葉山町が合併し、人口は745,938人。湘南市は旧平塚市藤沢市茅ヶ崎市、寒川町、大磯町、二宮町が合併し、人口1,031,445人。相模市は、旧小田原市秦野市厚木市大和市伊勢原市、海老名市、座間市南足柄市綾瀬市中井町大井町、松田町、山北町開成町箱根町真鶴町湯河原町愛川町、清川町が合併し、人口は1,437,202人。相模原市はすでに合併を終えており今回は単独での昇格したもので、人口694,752人。 これまでの経過を振り返ってみると 今回の異例の合併、廃止の発端は相模原市政令指定都市昇格。もともと県の決定は政令指定都市はほとんど及ばない。横浜市川崎市の二つの政令市のある神奈川県の他の市町村の間では、県庁が横浜市にあること、県議会の議席過半数政令指定都市に割り当てられていることに不満があった。 相模原市が昇格すると県議会では92の議席のうち66議席政令指定都市のものとなる。これを機会に県中西部の都市が県議会の議席配分の見直しと県庁の県中央部への移転を要求した。 しかし、横浜、川崎、相模原選出の県議会議員が多数を占める県議会がこれを拒否した。しかも、議論の過程で相模原選出のA議員が「悔しければ自分も合併して政令指定都市になればいいじゃないか。合併の話もまとめられないくせに変な要求をするな。第一、県中部に県庁を移すといってもどこの市にするか話をまとめることもできないくせに。」と発言。これに他の市町村は猛反発し、旧平塚市藤沢市茅ヶ崎市、寒川町、大磯町、二宮町は、一時とん挫した湘南市構想を復活させることで一致、急きょ合併が決まり、「相模原市とは違って人口が100万人を超す本格的な政令指定都市藤沢市B市会議員)」が誕生することになった。この時点で神奈川県第3位の都市という相模原市の野望は断たれた。   ところが、この湘南市という名前に「逗子や葉山こそ湘南の本家。葉山のない湘南市なんて騙りだ。(葉山町C町会議員)」と逗子市、葉山町が反発した。合併を急ぐ「湘南市」グループは、「それならいっそ逗子市、葉山町も参加して下さい。飛び地になりますが決して悪いようにはいたしません。(藤沢市D市会議員)」と下手に出た。それならと逗子市民、葉山町民の間に参加の機運が高まった。これに驚いたのが関東の古都を自負する鎌倉市中核市である横須賀市鎌倉市は伝統はあるものの人口は中核市にもなれない17万人。このままでは横浜市と湘南市に囲まれてしまうことになる。県内唯一の中核市である横須賀市も半島の突端三浦市と合併しても政令指定都市にはなれない。そこへ「横須賀市が入りたいなら入れてあげてもいいよ。(横浜市D市会議員)」という「上から目線の発言(横須賀市E議員)」が飛び出した。反発を受けたD議員は、「横須賀市が気の毒なので、親切心で言っただけ。」と釈明したが、横須賀市は「気の毒とはなんだ。」とかえって反発を強めた。 そして、「横浜市に入っても、どうせ新参者扱いされるだけ(横須賀市F議員)」と考えた横須賀市鎌倉市、逗子市、三浦市葉山町に合併を呼び掛けた。問題となる市名については鎌倉湘南市でいいと譲歩。「古都鎌倉の名前が残るなら。」、「湘南という地名がつくなら。」と鎌倉市、逗子市、葉山町は同意。三浦市は迷っていたが、横須賀市の説得に応じた。これには、横須賀市の某有力政治家が「参加しないなら三浦市に続く県道、市道は封鎖する。上水道も流さない。」と脅かしたという「根も葉もない噂(横須賀市課長)」も流れている。人口は70万人を超え、政令指定が受けられることになった。合併決定後、「最後にものを言うのは人口。新市の人口の過半数は旧横須賀市だから市政、人事の主導権はこっちのもの。名を捨てて実を取ったまでのこと。(横須賀市役所G課長)」という発言も出た。 政令指定市が続々と誕生する勢いに浮足立ったのが県央内陸部の秦野市厚木市大和市伊勢原市、海老名市、座間市。「市議会の議席が減るのは嫌だが、『なぜうちは政令市になれないのか。政令指定市となれば不動産の価格も上がるのに。』という市民の声には抗えない。(座間市H議員)」と、県央部で合併話が急速に進んだ。 これに困惑したのが小田原市。「これまでなら市でよかったが、他の市が政令指定市になるのに我が市だけがただの市でいいのか。(小田原市I議員)」という声が強くなった。しかし、周辺の自治体と合併しても政令指定都市になるだけの人口にはならない。そこで県央の合併に参加を申し込んだ。県央グループは「予想もしていなかった突然の申し入れ(厚木市J議員)」に驚いたものの、「県西部まで含めれば、人口が川崎市を抜いて県2位になるとの判断からこれを受け入れた。南足柄市綾瀬市中井町大井町、松田町、山北町開成町箱根町真鶴町湯河原町愛川町、清川町も「時勢には抗しがたい。高齢化が進む中で、単独で国民健保、介護保険を運営していくのは到底無理(箱根町K議員)」と合併に参加することになり、神奈川県には6つの政令指定都市だけで構成されることとなった。 この「ドミノ倒しのような合併(神奈川県L部長)」に、県は表面は地域住民が決めることと平静を装っていたが、県央、小田原市の合併の動きが出てきたときには、県庁の職員に「我々の立場はどうなるのか」と動揺が広がった。そして県庁の複数の幹部が町村に合併に参加しないように働きかけた。ところがこの動きが報道され、かえって県民の間に「県に何の意味があるのか?県知事はどんな仕事をするのか?県議会議員が92人も必要なのか?」という疑問を広げる結果になった。そして、一気呵成に県の廃止、広域事業組合への業務の移管が決まった。 県政治家の困惑 県が廃止されれば、県議会もなくなる。県知事、県議会議員は身の振り方が注目された。知事は広域事務組合最高顧問となった。県議会議員は、「国政を目指す。(アルファ議員)」、「地元の政令指定都市市長選挙について支持者と相談している。(ベータ議員)」、「政令指定都市なら市会議員もやりがいがある。(ガンマ議員)」と各種選挙への意欲を見せる者もいる。しかし、「国政選挙と言ってもこれまで支持してきた現役議員がいるし、市長ポストは限られている。市会議員に出ればこれまで支持してくれていた議員と争うことになる。そう簡単にはいかない。(デルタ議員)」という声も。実際に選挙に出られる議員は少なく、「もう年だし、ここらで引退する。選挙に負けて引退ではみじめだ。立候補しようとして、できなかったら晩節を汚すことになる。(オメガ議員)」という議員も多い。 切実な県職員 8,000人の県職員にもショックが大きかった。保健所所など現業部門は自動的に政令指定都市に引き継がれるが、たいへんなのは知事部局。政令指定都市に引き取ってもらうのが原則だが、県議会事務局などは仕事がなくなる。広域事務組合も規模は限られている。「新しい政令指定都市には、まだ、国との付き合いのノウハウがない。我々が必要なはず。」という声もあったが、指定都市側は意外に冷たかった。「2,3年で定年になる職員か、若手は引き受けるが中高年はねぇ。国との付き合い方と言っても1,2年で慣れる。1年更新の嘱託で十分。なんせ、うちには総務課長が19人もいるから。(相模市職員)」という声も聞こえている。政令指定市は行政区を作ったが、それでも職員は過剰気味とみられている。「しばらくは、神奈川県内で地方公務員の採用はなさそう。東京で受けるしかない。」と公務員専門校生は嘆いている。 もっとも、県職員の中には昨年末で寿退職の予定だったが、最後までいることにした職員もいる。分限免職で割増退職金が出るからだ。 複雑な表情の他の道府県 他の都道府県の思いは複雑だ。「市町村の充実に伴って都道府県の役割が小さくなってきたのは事実。、今後も政令指定都市は増え続ける。もし、旧神奈川方式がうまくいけば、東京都は別として道府県そのものの存在が問われることになる。(某県職員)」からだ。県内に政令指定都市を二つ持つのは、静岡県大阪府、福岡県だ。とりわけ戦々恐々としているのが、お隣、静岡県だ。すでに静岡市浜松市と二つの政令指定都市がある。これで弾みが付き、さらに合併が進んだら、神奈川と同じになってしまう可能性がある。 町田市と合併?相模原市 悔しさを隠せないのが相模原市だ。県内第3位の都市になるはずが、最小の都市になってしまったからだ。「いっそ町田市と合併して、百万都市を目指そう。そうすれば東京都第一位の政令指定都市だ。(市内商店主)」という声も出ている。 人気blogランキングでは「社会科学」の53位でした。 ↓ここをクリック、お願いします。 人気blogランキング