資産と負債の区別ができない日本経済新聞

今週の最悪の記事。3月19日の日本経済新聞。「手当債頼みの退職金」「地方財政の新たな”火種”に」という見出しです。

全体としては地方自治体では「07年に支払われる退職金は都道府県だけで、軽く1兆円を突破する。」「一部は自主的に退職基金を設けているが、全額を賄えるだけの蓄えは無く、多くの自治体が「退職手当債」の発行を余儀なくされている。」「手当債はいつかは全額を自前で返さなくてはならない借金。地方財政は、また新たな”火種”を抱え込んだ。」というもので妥当な内容です。

しかし、途中が良くない。

企業は退職給付引当金として資金を積み立てているが、現金収支が基本の自治体会計には制度的な引き当て措置がない。」強調したのは平家です。

強調部分は正しくない。引当金というのは将来発生する費用(の現在価値)を帳簿上で表示したもので、これはあくまで負債です。

一方、積立金というのはもしあれば実態のある資産です。

当たり前のことですが、負債は資産ではありません。引当金があるからといって、その額に対応する資産があるわけではありません。帳簿上100億円の退職給付引当金があるということは、将来支払うべき退職金が100億円ありますと言う情報を示しているに過ぎません。退職金の支払いに充てるために100億円の現金や預金が用意してあるわけではないのです。

退職給付は引き当ててはあるけれど、それに対応する資産はなく、いざ退職金を支払うという段になれば、借り入れざるを得ないということは、理論的にも起こり得るますし、実際にも起こっています。企業が自治体に比べて、そういう面で優れているわけではありません。

多分、民間企業はしっかりしているけれども、自治体はちゃんとしていないと言って、自治体のいい加減さを強調したいのでしょうが、むしろ日本経済新聞が、企業会計の初歩を理解していないことを宣伝する結果になってしまっています。書かずもがななという感じがします。

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