足による投票 その3 夕張残留市民

足による投票 その2」の続きです。

夕張の市立総合病院が、4月から規模を縮小して、公設民営の診療所になるそうです。医師の数も大幅に減るので、透析治療ができなくなり、治療を受けている患者は市外の病院に通わなければならなくなるようです。

さて、足による投票の権利を行使して、市外に転出した元市民の行動は個人として考えれば合理的です。

自分が住んでいる間は、振り返って見れば借金で過大な支出をすることを認め、サービスを受け取りました。そして、転出することによって、謝金返済の負担からも、行政サービスの低下の悪影響からも免れています。

個人の立場を考えれば、何の問題もありません。

夕張のような事態を避けるためには、市が財政規律を守るように市民が行政を監視すればいい、その監視を容易にするために情報公開を進めろという意見を耳にします。

また、夕張に対し全国最低のレベルの行政にすることによって、見せしめ効果を期待する向きがあるのかもしれません。

しかし、足による投票権を持つ市民が多ければ、このシステムは必ずしも有効ではありません。放漫財政から最大限の利益を引き出し、その後離脱するのが、合理的だからです。

しかし、事実上、足による投票権を持たない市民は大変です。破綻後、借金を背負い、行政サービスの低下を引き受けなければならないのですから。

居住地を自由に選べることが足による投票システムを機能させるためには必要なのですが、それは同時に、言葉は悪いですが食い逃げを可能にしてしまいます。

この矛盾をどう解決するのかが課題です。

なお、私は夕張市から転出されたかたがたが、悪意を持って計画的に何かをしたとは、考えていません。炭鉱の町で炭鉱がなくなれば、衰退と人口減は必然なのですから。

それにしても夕張に残留される市民はお気の毒です。

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