10月の貿易収支黒字幅は再び縮小

8月は貿易収支の黒字が2005年8月の2倍近いものになり、9月(速報)も貿易黒字が改善していました。2ヶ月続いて改善をしていたのですが、10月(速報)は、再び貿易黒字幅が縮小しました。2005年10月に比べ、24.8%の減少です。 「9月も貿易収支黒字幅は改善」では、「黒字幅縮小という基調が転換しつつあるのかもしれません。景気にとってはプラスです。」と書いたのですが、どもそうとは言い切れないようです。 10月までの累計額を見ると、貿易収支の黒字(バランス)は、昨年と比べると16%ほど減っています。減少額は、1兆1千億円ほどです。この調子で行くと2006年の貿易収支の黒字は7兆円代半ばになりそうです。もしそうなれば、相当低い水準に戻ってしまうものの、2001年の6兆6千億円よりはましと言うことになります。
貿易収支バランス(百万円、%)
バランス増加額増加率
2000年10,715,775
2001年6,563,711-4,152,064-38.7
2002年9,881,4503,317,739+50.5
2003年10,186,327304,877+3.1
2004年11,953,3431,767,016+17.3
2005年8,707、152-3,246,191-27.1
2005年10月まで7,204,427
2006年10月まで6,079,168-1,125,259-15.6
注 輸出は、FOB価格、輸入はCIF価格です。輸出入には国境の間を輸送しなければなりません。このため、運賃がかかります。また、運送の際の事故に備えた保険料もかかります。FOB価格には、このような運賃、保険料、輸入関税を含みません。従って、輸出品を日本の港(又は空港)まで運んで引き渡したときの価格です。一方、輸入に使うCIF価格は、日本の港(又は空港まで)運ばれた輸入品の引き渡しを受けるときの価格です。運賃や保険料、輸入関税を含んでいます。輸入もFOB価格にすると、相手国の港(又は空港で)受け取るときの価格で計算することになります。国境間の運賃、保険料の分だけ安くなります。 この表で国際収支統計では、輸出にも輸入にもFOB価格を使っています。従って貿易統計と国際収支統計を比べると輸入額は貿易統計の方が多めに示され、貿易収支の黒字は少な目に示されています。 貿易統計を紹介している理由は二つあります。 まず、発表が早いことです。もう一つは、日本国内の雇用への影響ではこちらの方がいいと思われるからです。というのは、海上交通などには、日本人があまり従事していないからです。 累計で見れば黒字は減っていますが、輸出は15.5%と高い伸びとなっています。
輸出(百万円、%)
輸出額増加額増加率
2005年65,656,544
2005年10月まで53,405,908
2006年10月まで61,665,5008,259,59215.5
輸入は20.3%増えています。原油や原料中心です。
輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年56,949,392
2005年10月まで46,201,481
2006年10月まで55,586,5719,385,09020.3
原油、粗油の輸入(百万円、%)
輸入額増加額増加率
2005年8,823,323
2005年10月まで6,976,976
2006年9月まで9,707,7162,730,74639.1
原油、粗油の輸入額は、39.1%増加しています。量は0.2%しか増えていません。ほぼ横這いです。1リットルあたりの単価が34.1円から47.4円へ13.2円、38.8%高くなっています。 1月から10月までの輸入の増加の29%は、原油、粗油の輸入の増加によるものです。 今後の見通しですが、前回も書きましたが、明るい材料として原油の国際相場が反落したことが第一です。7月にはNYで原油先物は1バレル80ドル近くになりましたが、現在は60ドルぐらいです。日本では2005年10月の単価が42.7円でした。今年10月の単価は47.8円です。上げ幅は5.1円、上昇率は12%まで小さくなりました。今後、円建ての単価が安定すれば、貿易バランスへの影響は小さくなっていくはずです。 これにより交易損失が減っていけば、生産の拡大に所得の拡大が近づいていきます。 人気blogランキングでは「社会科学」の23位でした。今日も↓クリックをお願いします。 人気blogランキング